頭ではなく体で覚えることの重要性 精神論と根性論は何が違うのか②

前回は頭脳が作り出す精神世界と肚が生み出す心の世界、ということを書きましたが、もちろんこの「頭脳」というのも解剖学的、生理学的に説明するとそれが大脳新皮質のことなのか、大脳辺縁系のことなのか、脳幹脊髄系のことなのか、はたまた、左脳と右脳のことなのか、と細かく分類すると際限なく話が広がってしまいますので、ここでは思考する脳、概念を生み出す脳、というところに話をまとめさせていただきます。肚というのもなぜ腹ではなく肚であり、内臓であるけれど五臓六腑なのかということはまた後程、お話をしたいと思っております。

 

頭で覚える?体で覚える?

 

運動音痴、頭でっかち、口ばかりで結局何も出来ない、など頭では解っていても実際にそれをやるとなると思うように身体が言うことを聞かない、そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか?目に見える世界、スポーツなどではまず見てまねる、ということが始まりと言えます。好きな選手のフォームやプレースタイルを真似する。見て盗む。徒弟制度における師匠と弟子の関係はまさにその師匠の息遣いから姿勢、考え方、感じ方をずっとそばにいてまさに肌で感じて盗み取るもの。

 

手取り足取り教えてはくれません。お弟子さんはまさに五感をフル回転させてその場の空気の流れまで頭ではなく身体で身に沁みこませるものです。感じ取るとは暗記とは異なります。

 

頭脳と肚では仕事が異なります。言うなら感性と知性はどちらかだけでは存在しません。

頭脳は頭脳だけでは機能しないのです。そして肉体だけでは肉体は機能しません。知性は感性をどうしても原始的なレベルの低いものだと見下す傾向があります。感性は知性をただの頭でっかちの理屈っぽい奴だとバカにします。

 

感情は肚から生まれます。その感情にいろいろな言葉というラベルを張り付けて管理するのが頭脳の仕事と言えます。東洋医学ではこの感情には7つあって(怒、喜、思、悲、恐、憂、驚)これを七情と言います。これらは動物の行動のエネルギーになると考えます。

「身体は正直だ」とは的を得ている表現と言えます。心に感じているものは眼に表れます。

感情と言う心は姿勢に表れます。そして頭脳は自分にとって都合のいい理論を作り上げます。失敗したときや自分にとって不都合が生じたときに言い訳をするのは頭脳の仕事と言えます。しかしこれも成長とともに自我の目覚めそして知識の学習と記憶ということを頭脳が出来る年齢になってきてからの話なのです。

 

感性は生まれたときに発動します。つまりは情動です。知性や理性はそのあとから機能するシステムと言えます。感性と知性、本能と理性、この二つはお互いに影響し合って初めて正常に機能するものなのです。どちらか一方だけに偏れば不具合が生じます。つまり情熱だけでもダメですし、知性だけでもうまくはいきません。言動が一致すること。口だけではいくらでも言えます。言葉を用いて説明するだけなら勉強さえすれば出来るようになります。その反面、身体がすることの全ては言葉では説明できないものです。実際、上手くできたときの感触やその時どうやったか?という記憶は頭の中に記憶されては残りません。

 

成功したときの頭脳は重要な記憶としては残さないのです。しかし失敗したときの記憶は鮮明に記憶されます。これは動物が危険を回避するためには必要なシステムだと言われています。パフォーマンがいいときほど、その時の記憶は明確にないと多くのアスリートが語ります。「ぐっときて、パッと」「ギューではなくて、グーなんだよね」というような、おおよそ理論的とは言えない表現にこそ、その動作の本質を得ていることは指導の現場にいるとよくあることです。感覚で伝えることとはまさに根性の世界であり、理論を持って頭でわからせるとは精神の世界。

 

コーチングとはまさに理論ありきであり、修練や稽古といわれるものは感覚ありきと言えるかもしれません。頭では解るが出来ないことと、理屈はわからないが出来ること。頭脳が肉体をコントロールしているのは間違いない事実ですが、その脳をコントロールしているのは肚であると言われて、皆さんはどう思いますか?

 

執筆者紹介
内田真弘 
1970年3月10日生まれ

神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科  教員
横浜国際プールはりきゅうマッサージ室    室長
筑波大学 理療科教員養成施設       非常勤講師
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科    非常勤講師
東京衛生学園専門学校 臨床教育専攻科     非常勤講師
ヒューマンアカデミー横浜校 トレーナー科     非常勤講師

ドイツ VPTアカデミー 認定 スポーツフィジオセラピスト
ドイツ VPTアカデミー 認定 PNF 

神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業後、ドイツ、フェルバッハにあるVPTアカデミーフィジオクラスに招聘され、スポーツフィジオ、マニュアルセラピー、PNFなどのアシスタントを務め、帰国後は各種専門学校での講義、治療院での患者さん、アスリートの治療、指導にあたる。日本サッカー協会主催の第56回サッカードクターセミナーでは「スポーツ競技に対するゼロ式姿勢調律法の有効性」を講義。神奈川体育センター主催のアスリートサポート講座での姿勢と呼吸についてのセミナーや、神奈川県体育協会主催での「PNF]セミナーなど各地で講演なども行う。指導しているアスリートもプロ野球、スピードスケート(オリンピック日本代表選手)、フィンスイミング日本代表、プロボクサー、サッカー、レスリング、テニス、ダンスと幅広く行う。

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