2022.11.22
「アマチュア」という概念とマルチスポーツについて スポーツが身近にあるという環境の重要性
皆さんはJ.P.R.ウィリアムズという人物をご存知でしょうか?
J.P.R.はテニスからラグビーに転向し、どちらもプロとしての道を選ぶことが可能であったが最終的に整形外科医になったという秀才アスリートです。なかなかお目にかかることのできない三刀流です。歴史上最も成功した時期にウェールズの代表だったことで知られています。しかも最終的にプロアスリートを選択しなかったというレアケースです。
J.P.R.の父は、医者を目指している息子に、医学の勉強とプロアスリートは両立しないと指摘し、アマチュアの道を選択するようアドバイスしていました。プロになったら二度と口を利かないとアマチュアの純粋さにそこまでこだわっていたと言われています。ラグビーのプロアスリートにならなかったこと、同じようにテニスのプロアスリートにならなかったことに悔いはないとJ.P.R.はいっています。
アマチュアという言葉
アマチュア(amateur)とはラテン語amätör(「愛する人」「愛好者」の意)から生まれた言葉とされています。その意味は、「素人の愛好者」「職業にしていない人」ということです。プロアスリートにならなかったJ.P.R.は整形外科の医師であることを誇りに思い、幸せに思うと同時に、地元のアスレティック・クラブでスカッシュやラグビーに参加しながらスポーツを楽しんでいました。
日本ではひとつのことをやり続けることが美徳という考え方や、型にはめて行われる教育文化が根付いています。文武両道という言葉がある一方で、受験勉強もせずスポーツだけで大学にいけてしまう環境も存在しています。トップを目指すアスリートの生活はスポーツ一色、そこからドロップアウトしたら何も残らない。
だから、何としてもスポーツにしがみつこうとするようになるのです。プロアスリートになるために早くから専門的にはじめ、頑張ってやり続けていればいつか開花するという考え方が、視野を狭めてしまっているような気がします。
当時のラグビー選手は「アマチュア」であり、現在のようなプロ選手はいませんでした。J.P.R.は、医学のキャリアを追求するために、テニスからアマチュアスポーツであるラグビーユニオンに移りました。
そして、ロンドンのセント メアリーズ ホスピタル メディカル スクールで学び、1973 年に医師の資格を取得しました。スポーツからの引退後、J.P.R.は会社の社長としてラグビーとの結びつきを維持しながら、整形外科医として医療の専門家を目指しました。その当時、ラグビー選手は社会的に「エリート」と呼ばれる選手が多く、ラグビーがパブリックスクールで誕生したという背景が物語っているのかもしれません。
スポーツが身近にあるということ
人間の潜在能力は無限大です。ところが、日本はスポーツにおいて、いろいろな種目にチャレンジして適正を判断するという環境を整っていません。そもそも日本には一般人が気軽にスポーツを楽しむ環境がほとんどありません。たとえばドイツでは市の施設が、一般人が仕事帰りに利用できる時間帯にもしっかり開放されています。
このように日常生活において、スポーツが身近にあるという点が日本との大きな違いといえます。ドイツには9万のスポーツクラブが存在し60種目以上の競技が行われており、ひとつのスポーツクラブで複数の競技を行うことが多いそうです。また、日本のように民間企業が運営するスポーツクラブと違いNPO法人のような形態で運勢されており、子どもから高齢者まで幅広く利用されています。
月会費が約10ユーロ〜13ユーロなので複数のクラブに所属しても負担は少ないというところがいろいろなスポーツにチャレンジできる大きな要素でもある。このように複数のスポーツに触れることのできる環境がマルチスポーツの理解を深め、普及の鍵になると思うのです。部活の地域移行も含め、今後の展開次第で大きく流れが変わっていくことを期待しています。
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スポーツのダイバーシティは可能か 日本的スポーツ観とマルチスポーツ
https://fcl-education.com/movie/next-sport-2/
ネクスポ
https://sports-training.wift.site/
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執筆者
福士唯男
VIRDSハンドボールアカデミー代表
特定非営利活動法人ネクスト・スポーツ理事
特定非営利活動法人バルシューレ・ジャパン 理事
一般社団法人日本スポーツマンシップ協会 理事
東海大学体育学部卒業後、日本ハンドボールリーグ所属で10年間プレー。引退後、ビーチハンドボールの普及活動に携わり日本代表男子監督として世界選手権に出場。その後、小学生チームの指導者として全国小学生ハンドボール大会にも出場。2013年にバルシューレと出会い、バルシューレの普及活動と同時に、スポーツマンシップと幼少年期の運動指導の在り方について講演活動を行なっている。