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2022.10.24

身近にあった遊びとしてのスポーツから、習い事としてのスポーツという変容 マルチスポーツの可能性を探る

今回は私自身の幼少期の運動経験からマルチスポーツについて検証してみたいと思います。

遊びとしてのスポーツ

私が小学生の頃は習い事でスポーツをする習慣はありませんでした。したがって、公園や空き地での外遊びが基本的な運動の場です。当時は特撮ヒーロー物が大ブームだったのでウルトラマンごっこや仮面ライダーごっこに明け暮れました。また、アメリカの戦争ドラマ「コンバット」を見て戦争ごっこをしたり、父親が見ていたプロレスの技を友達同士で掛け合ったりして遊んだりもしました。特撮ヒーロー物の闘い方がプロレス技の応酬でしたから、ごっこ遊びで自然と身体が鍛えられました。

スポーツは自分で行うというよりテレビで見ることが多かった時代です。「巨人・大鵬・玉子焼き」という戦後の日本の流行語があったように誰もがテレビを見て読売ジャイアンツや横綱大鵬を応援していました。そして、野球を題材とした番組として歴代アニメ視聴率ランキング5位(36.7%)の「巨人の星」が一世を風靡しました。

ストーリーは、主人公の星飛雄馬がかつて巨人軍の三塁手だった父・星一徹により幼年時から野球のための英才教育を施されプロで活躍するようになるというスポ根アニメの走りです。あえて私がスポーツをしていたというなら野球があげられると思います。それは近所のお兄さんたちとの外遊びの中で日常的に行われていました。バドミントンやローラースケートを路上で自由に行なっていたのと同じレベルです。たまに人数不足で町内の野球大会にピッチャーとし駆り出されましたが、勝ったことは一度もありませんでした。そのことがその後の人生に大きな影響があったわけでもなく、今となってはただの笑い話です。

現代のスポーツは習い事?

対象的なのは現代の子どもたちです。スポーツは習い事として行われ、塾や他の習い事で1週間のスケジュールが埋まっています。子どもと約束するのには、アポイントが必要と思えるくらい多忙です。大人に管理された時間の中で生活し、子どもたちだけで自由に遊ぶ時間が圧倒的に不足しています。身近に身体を動かして遊ぶ場所はなく、スマホ、ゲーム機がお友達のようです。

子どもの怪我の問題も時代で大きく変わってきたと思います。以前は、捻挫、骨折、裂傷といったスポーツ外傷が大半でしたが、今では慢性的なスポーツ障害で病院、接骨院に通う子どもが増えたことが気になります。

代表的な障害として、「野球肘」「オスグッド症・ジャンパー膝」「腰椎分離症」などが増えてきています。そうなる背景にはスポーツの勝利至上主義があります。大会では常に結果を求められ、自然と練習時間、強度が増していきます。

「勝たなければ意味がない」「絶対に勝たなければならない」と思っているのは、子どもではなく大人側です。チームの宣伝のため、指導者が実績や名声を得たいという私欲に支配されているケースです。その結果、より早く上達させたいという考えがエスカレートし早期専門化につながるのです。毎日休みなくサッカーそして複数のサッカースクール通い。皆さんの周りにもそのような特定のスポーツやり過ぎのお子様がいるのではないでしょうか。

スポーツとは何か?

スポーツの本質はゲームであり遊びといえます。ホイジンガは、遊びの重要性に着目し、人間を遊ぶ存在であるとしました。面白さ、楽しみ、歓びは、遊びの本質的なものであり、感動を生む力や人を夢中にさせる力でもあると言っています。一方で、19世紀末に成立した近代スポーツは組織化、ルールの厳格化、記録への拘り、訓練の強化によって、あまりにも真面目なものに傾斜し、本来の遊びの精神を失い、純粋な遊びの領域から遠ざかっていると指摘しています。子どもたちにとって、専門分化したスポーツ種目の技術が教え込まれることは相応しくありません。多種多様な運動経験を積み、オールラウンドな運動能力を獲得することが優先されます。私はマルチスポーツとは、そうのような運動体験が体験できる環境の場だと考えています。

都市化が進み昔のような外遊びが出来る環境を取り戻すことは不可能に近いです。であるならば意識的に他種多様な運動体験ができる環境を作らなければなりません。マルチスポーツに取り組むということは、様々なスポーツの専門技術を追求するのではなく、新たな種目との出合で豊かな人生や可能性を広げることであり、スポーツの本質に立ち返ることでもあります。

 

こちらの記事も合わせてご覧ください。

スポーツをアップデート マルチスポーツは次のスポーツのカタチとなるのか?
https://fcl-education.com/movie/nextsport/

 

ネクスポ
 https://sports-training.wift.site/ 

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執筆者
福士唯男

VIRDSハンドボールアカデミー代表
特定非営利活動法人ネクスト・スポーツ理事
特定非営利活動法人バルシューレ・ジャパン 理事
一般社団法人日本スポーツマンシップ協会 理事

東海大学体育学部卒業後、日本ハンドボールリーグ所属で10年間プレー。引退後、ビーチハンドボールの普及活動に携わり日本代表男子監督として世界選手権に出場。その後、小学生チームの指導者として全国小学生ハンドボール大会にも出場。2013年にバルシューレと出会い、バルシューレの普及活動と同時に、スポーツマンシップと幼少年期の運動指導の在り方について講演活動を行なっている。

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