ブラジルサッカーの育成から学ぶ

世界一のサッカー選手産出国ブラジル。ペレ、ロナウジーニョ、ネイマールetc,,,いつの時代も創造性溢れるブラジル人選手のプレーは世界を魅了してきました。ブラジルで選手が育つ理由を日本語で調べてみると”ストリートサッカー”や”フットサル”という記事をよく目にします。勿論それも正解なのですが、ブラジルの育成年代で指導者をしている筆者・平安山から見ると内情はもっと多様で、答えは複数あると感じます。今回は新しいブラジルサッカーについて探求してみましょう。

ジュニアの位置付け。コリンチャンスの場合。

日本人にとっては「ブラジルサッカー」と一言に表現してしまいますが、国土も広く人種も様々な国ブラジルでは、サッカーもまた多様性に富んでいます。サンパウロ州だけでも日本と同じくらいの面積がありますし、黒人が多い地域、白人が多い地域、アジア系が多い地域など、まるで外国の様です。サッカーにおける育成年代においても、南の方ではテクニカルな選手、北のほうでは身体能力の高い選手が多いと言われています。筆者がこれまでお世話になった中では、アトレチコ・パラナエンセはスピード重視、アヴァイFCはテクニカル、コリンチャンスもテクニカル重視でした。

ここではコリンチャンスの例をメインに紹介していきます。

コリンチャンスはサッカー部門に大きく分けてTOPチーム、育成部、普及部があります。更に育成部の中でもU15以下とU17・U20で考え方が違います。筆者がお世話になっていたのはU15以下の年代。ここでは「勝利よりも育成」が重視されていました。逆にU17やU20になるとテーマは「必勝」。ほとんどプロに近い考え方で行うのでよりシビアになりますし、そもそもこのくらいの歳になるとだいたいプロ契約をしているのが普通になってきます。

U15以下でも勿論負けて良いわけではないですし、勝利を目指すからこそ得られるものもあるわけですが、例えば失敗してもまたチャンスが与えられたり、指導者側は冷静に広く物事を見る能力が要求されました。

「心は熱く、頭は冷静に」とはよく言ったものです。

ジュニア年代での育ち方

前項でも述べたように、ブラジルは多様性の国。ブラジルのジュニア年代の育ち方も多種多様を極めています。

ジュニア年代での育ち方を大きく分けると

・ストリートサッカー

・フットサル

・11人制サッカー

になります。

またはどれも行っているという複合型の子供もいます。

○ストリートサッカー

南米の伝統的選手育成。近年は都市部では車の増加や、人攫いなどの治安面の不安から減ってきているのが現状です。とは言え都市部でも全く見ないわけではないですし、貧困地帯や田舎ではまだまだ見かけます。

○フットサル

ブラジルではフットサルからスタートして、それからサッカーに移行する子も多いです。コリンチャンスではサッカー部門の他に、フットサル部門も小学生からプロまで持っているので、子供によってはその両方に所属している子もいます。

長い子ではU17までサッカーとフットサルを両立していました。3時からサッカー、7時からフットサルの練習、というスケジュールです。一瞬の判断の速さや巧みな足技は、フットサルで身に付けたという選手も多いです。今ならネイマールがその代表と言えます。

日本人が勘違いしているブラジルのクラブ育成

ブラジルのジュニア年代関連でよく日本人に勘違いされている事は、むしろクラブでの育成方法でしょうか。何度か述べますように、ブラジルは多様性の国。クラブ育成に関しても本当に違いますが、ただ日本の方からすると「南米サッカー」とあまりに一括りだったりします。逆にブラジル人から日中韓もタイもカンボジアもサウジアラビアやイランも全部同じにして「アジアサッカー」と呼ばれると、違和感はありませんか?アジアの中でも違いがあるはずです。

だいたい日本人の方が思うブラジルの育成はストリートサッカーや、貧しい環境なのかなと感じます。しかし、南米でも例えばBIGクラブであれば、しっかりとお金をかけて育成しています。立派な天然芝や人工芝のグラウンドを何面も持っていたり、ジムや食堂も完備されています。コリンチャンスなら育成部でもパソコンをやビデオを使った分析班もいます。プールもあります。給料が億越えの選手もいます。

練習中にGPS機能や心肺測定機能付きのスポーツブラを装着してプレーし、走行距離やスピード、心拍数、スピード別の走行距離などのデータも取ったりします。食堂も無料で、専門家によって栄養価を考えられた食事が提供されるので、ブラジル人選手の身体能力が高いのは何も遺伝だけではなく、こういった取り組みも成果を出しているのです。

食堂があるのは決してコリンチャンスだけでなく、5部相当のクラブであっても、ブラジルにある約800のプロクラブと、プロカテゴリーはないもののしっかり運営してる育成型クラブでは普通です。無料で食育をしているクラブは1000を超えるのではないでしょうか。ブラジルは本当に多様な育成メソッドを持つ国なのです。

 

※こちらも合わせて読んで頂けると理解が深まります。

ブラジルサッカーを取り巻く環境の違いから育成を考える
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/brazil-football-soccer-world-japan/

世界のサッカー強豪国に学ぶ アルゼンチンサッカーの根本
https://fcl-education.com/training/performance/world-junior-football-argentina-soccer/

日本とスペインの育成の違い
https://fcl-education.com/raising/independence-coaching/fcl-spain-football-world/

 

執筆者
平安山良太

小学生よりサッカーを初めるが、ケガにより早期挫折。若くして指導者の道へ。日本で町クラブ、部活、Jクラブで幼稚園~大学生まで幅広く指導者として関わり学んだ後、海外へ。東南アジアのカンボジアンタイガーの全身クラブやラオス代表チームで研修の後、ブラジルへ渡り、ブラジル1部Atlético ParanaenseのU14でアシスタントコーチを務めた。2014年5月からはクラブワールドカップでも優勝したSC Corinthiansでアシスタントコーチを務めるかたわら、日本に向けて情報発信を始める。2015年10月からはAvai FC、2016年前半はJ3のFC琉球通訳、後半からはコリンチャンス育成部に復帰。2017年はブラジル1部のECバイーアで研修生指導者からプロ契約を目指している。ペルー1部のアリアンサ・リマや、メッシを育てたアルゼンチン1部のニューウェルスなどでの研修歴も。

twitter: http://@HenzanRyota
mail: ryota_henzan@yahoo.co.jp

 

RELATED関連する他の記事
PAGE TOP