スポーツ指導に対する一考 大人と子供の違い

運動することとスポーツをすることの違い。前回のシリーズで話に触れてきたが、今シリーズではもう少しそれについて違う角度から話をしてみたいと思う。スポーツをするためには、運動が必要だ。

サッカーを楽しむためには基礎体力が必要になるし、ルールを覚えなければサッカーにすらならない。もちろんそれ相応のスキルも必要だし、コミュニケーション能力がなければチームにすらならない。しかし、運動神経がいいという事とスポーツ万能という事は意味が異なる。

運動は動物にとって生きていく上での必須条件である事を意味するが、スポーツは人間という動物が行う特別な運動とも言える。音楽が聴けるのも筋肉が運動してくれるから聴くことが出来るし、食事をするのも、瞬きをすることも呼吸をすることももちろん、心臓は息を引き取るその瞬間まで運動し続けている。

スポーツとは人生をより豊かにしてくれる、人間だけが手に入れた運動と言えるかもしれない。

大人の知性と子供の感性

人間の大脳新皮質はとにかく理屈が大好きだ。自分にとって都合よく理解、解釈できる世界を作ることが仕事でもあるからだ。指導者にも、理論派と言われる人と感覚派と言われる人にタイプ分けされる。「名選手名監督ならず」頭でわかることと身体が出来る事には温度差がある。

言葉は人間にとって重要なコミュニケーションツールの一つ。だが、子供の指導をするときに、言葉を用いて様々な理屈や理由を説明してもそこから行動に移せるか?という難問が常に残る。

努力に対してどのような報酬を提示されているから人間は努力をするという単純な事ではない。特に、それは子供にとっては更に理解しにくい事と言える。

今ちゃんと勉強をしておかないと大きくなったときに困るわよ、と親に言われても、わかっているよ、と返事をしながらも本当に危機感を感じて、もしくは将来のために勉強をどれだけの子がするのだろうか。

言葉を理解する事はさほど難しいことではないが、それが身に染みてわかるかどうかはまた別問題であろう。(大人になれば身に染みてわかるか?と言われたら必ずしも大人だからそれがわかるわけではありませんが)

大人の論理と子供の論理は世界が異なる。

大人の論理で子供を知ることが出来ない理由の一つに、その行動目的が合理的か感情的なのか、そうでないのかという事が考えられる。子供のやる事には一貫した論理があるかといったらそうではない。子供の行動はその時の思いつきで感覚にまかせて動くという事が大人に比べて多いと言える。

子供が天才と言われるのは、大人が無意識のうちに知識や法則という常識に思考や行動が制限されるのに対して、子供はまだその常識に縛られにくく自由奔放に出来るからこそ天才の閃きが生まれる。

実際大人になっても閃きという感性とそれをうまくコーディネートする知性とのバランスが上手く取れているアスリートが一流と言われるアスリートと言えるのではないだろうか。

情動から行動へ

大人になると一日に笑う回数が子供の時に比べて極端に減少する事が知られている。大人からすれば下らないと思えることほど子供は喜び笑うもの。それに対して大人が喜ぶものは子供からすれば何が楽しいのかわからないものだ。

この事は成長するに従い感性で動くから知性で動く事への変化を意味します身体で笑うということから頭で笑うという事へのシフトチェンジ。運動においても理屈が感性に制限をかけるのは、人間が他の動物と大きく異なる所でもある。

これは感情や感性による心身の在り方、使い方から、教育により理性や知性による心身の在り方、使い方へと変移していくからである。躾なのか、指導なのか、稽古なのかトレーニングなのか。日本のスポーツ指導における難しさは「スポーツ」ではなく「体育」という学校教育がその弊害になっていることもその要因の一つかもしれない。

小さいときはただそのスポーツ(運動)が楽しくてやれていたのがいつの時代からかつまらなくなってしまう。一般的な技術論や指導論にフォームやスタイルなどの型にはめられ始めてからパフォーマンスが落ちてくる。

子供とは無邪気に身体を動かすという動物ならではの本能で身体を使いこなします。無邪気、つまりは余計な理論や理屈がなく自然体で動き回れていたのに、常識に縛られた大人の理屈で指導をするところからつまずきが始まるというのはよくある事と言えます。

ここに頭脳が作り出すスポーツにおける身体の使い方と、もともと生まれながらに持っている本能としての身体の使い方のズレが生じてくると言えるだろう。

子どもの持っている感性を見出し感性に合った知性という指導をする。知性と感性 理性と本能のコーディネーションこそ指導者に求められる能力といえるであろう。

執筆者紹介
内田真弘 
1970年3月10日生まれ

神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科  教員
横浜国際プールはりきゅうマッサージ室    室長
筑波大学 理療科教員養成施設       非常勤講師
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科    非常勤講師
東京衛生学園専門学校 臨床教育専攻科     非常勤講師
ヒューマンアカデミー横浜校 トレーナー科     非常勤講師

ドイツ VPTアカデミー 認定 スポーツフィジオセラピスト
ドイツ VPTアカデミー 認定 PNF 

神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業後、ドイツ、フェルバッハにあるVPTアカデミーフィジオクラスに招聘され、スポーツフィジオ、マニュアルセラピー、PNFなどのアシスタントを務め、帰国後は各種専門学校での講義、治療院での患者さん、アスリートの治療、指導にあたる。日本サッカー協会主催の第56回サッカードクターセミナーでは「スポーツ競技に対するゼロ式姿勢調律法の有効性」を講義。神奈川体育センター主催のアスリートサポート講座での姿勢と呼吸についてのセミナーや、神奈川県体育協会主催での「PNF]セミナーなど各地で講演なども行う。指導しているアスリートもプロ野球、スピードスケート(オリンピック日本代表選手)、フィンスイミング日本代表、プロボクサー、サッカー、レスリング、テニス、ダンスと幅広く行う。

 

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