GK練習の構築とジュニア年代におけるGK育成について

GK練習の構築とジュニア年代におけるGK育成

前回の記事ではGKのフレームワークの一部分について触れた。

GKに求められるプレーを明らかにしていく事は、GK練習をオーガナイズする上で大事な要素の一つであり、本記事ではGK練習の形式やジュニア期の練習について触れていく。

GKのプレーの流れ

GKのプレーは以下のようなサイクルモデルに簡素化する事ができる。  

1,     試合の状況を察知する(フレームワーク参照)

2,     相手のプレー(主にスルーパスやドリブル)に対しての判断

3,     相手のプレー(主にシュートやクロスボール)に対してのGKアクション

4(a),   ボール奪取;「素早い切り替えによるカウンター」及び「後方からの組み立て」の判断

4(b),   セカンドアクション(1に戻る)

ドイツではゴールサイズが大人規定より小さいU13の終わり頃までにGKの基礎とされているものを一通り網羅する事で、U14以降に更に専門的な練習を行い積み上げていく事が推奨されている。

その際にはプレーサイクルと照らし合わせながら、ゲームオリエンテッドな練習構築をしていく事が求められる。

GKのプレーは「準備」が重要であるとはよく言われるが、そのためには近年注目視されている認知機能が重要であり、主に視覚情報や記憶などを基に自分が立たされている状況に気付くことから始まる。

また、起こり得る状況を予測することも認知機能に含まれ、トップレベルのGKは予測の精度や視覚機能が高いという研究報告もある。

GK練習の種類

GK練習は専門性の高いポジション別練習であり、私は目的に合わせて以下のようにカテゴリー分けをして行なっています。

- テクニックトレーニング
- 試合の状況に近いトレーニング
- チームトレーニング
- GKバトル

テクニックトレーニング

1つのテクニックの習得(改善)やそのテクニックを分化させていく時、更には複数のテクニックを状況に応じて使い分ける目的の際に行います。

戦術的要素はそれほど高くないが、GK練習は常にゲームオリエンテッドで行われるべきであり、ドイツでは仮ゴールのサイズに応じてテクニックを使い分けるGK練習の構築が推奨されている(ゾーントレーニング)。

私個人としては、「ゴールまでの距離」と「シュートスピード」を変更する事で時間的プレッシャー(ボールが何秒でゴールに達するのか?)を調節するようにしている。

練習目的にもよるが、シュートコースを明確に指定せずに中〜遠距離のボール位置から始める練習は比較的多い。

ボールが蹴られるより先にGKアクションをさせない一面もあるが、認知機能(特に注意機能や眼球の動き)を取り込む事で、シュートスピードやコースを読み、適切なプレー選択する事が要求されるなど、認知的にもゲームに近い負荷をかける事ができる。もちろん、レベルや年齢を考慮する必要はある。

試合の状況に近いトレーニング

この形式では戦術及び認知的要素(ポジショニングやGKアクションを実行するタイミング等)が強くなり、原則や判断基準を身に付ける練習やその枠組みの中でテクニックを発揮する練習となる。

その際は(予測可能であるが)何が起こるかわからないオープンな状況設定が望ましい。

例えば、相手役を複数人設置した状況で、ゾーン1や2でゴールラインに向かって縦に相手がドリブルをしているのであれば、シューターが自分で判断をする事でシュートやマイナスクロスにも備えなくてはならない。

GK 落合様

その上で、以下のようなプレーサイクルに沿って要求する事で複合的な練習になる。

- どこに立っているのか?(ポジショニング)
- どのくらいの広さの空間を守る事ができるのか?(プレーエリアの把握)
- マイナスクロスにチャレンジせずにゴールを守るのであれば、時間を稼ぐのか距離を詰めるのか?(プレー選択)

「動作の流れを習得するのは、その動作を試合の状況下で使うためである」という見解もある。

しかし、最大の欠点は味方DFの再現が難しい事であり、ビニールダミーを置く事で再現をする事が可能ではあるが、完全な試合の状況とは言えない。

チームトレーニング

テクニックや1対1等の基礎的な戦術などを扱う事ができるGKのみの練習に対して、チームトレーニングでは味方DF動きなどが加わり、更に複雑な状況下でのプレーが求められ、特にクロスボールへの対応など空間を守るプレーのレベルアップには欠かせない。

また、GKの経験のない指導者もゾーンモデルを理解することでチームトレーニングでの戦術的なアプローチが可能となり、GKコーチのいないクラブでもGKを育成する事ができる。

逆にGKコーチはサッカーの理解を深める事で、GKと別ポジションの合同練習をする事も可能である。

GKバトル

GK同士で行う競争及びゲーム形式であり、私は以下のような目的でGKバトルを実施している。

- 主にジュニアユース年代において技術戦術的アプローチの導入をする時
- 各状況で最も重要な原則に沿いプレーをして、成功体験をしてもらう時
- GKの専門的なトレーニングを始めるには早いが、 GKとしてプレーをする意欲がある時

例えば、ミニゴールを2つ設置する事で、「仮ゴールを小さくする」や「体の面を最大限にする」などの原則を用いて1対1の練習などが可能である。

ジュニア年代のGK育成

ヨーロッパのエリートサッカー選手に関する研究では、「6歳頃から“アクティビティ”としてクラブでサッカーを始め、歳を重ねるごとに“練習”という要素が少しずつ増していく。そして、“練習”の重要性が大きくなったのは10歳頃である傾向があった」という報告がされている。

これはGKにも同じ事が言えるのではないだろうか? GKの“練習”の重要性及び必要性が上がるのは、ある程度GKを経験した後だと考えている。

ボールと身体のサイズ感が合わない小学校低中学年や経験の浅いGKに“練習”を定期的に提供するのはお勧めできない。

しかし、「GKをやりたい人!?」と聞けば多くの子どもたちがGKをやりたがるように、興味がある子どもは多くいるはず。

GKをするのであれば“練習”ではなく、GKバトルなどでゴールを守る経験や楽しさを味わえるオーガナイズや様々な運動経験を通してボールを「捕る」「投げる」などの基本的な運動動作、「スペースを見つける」などの球技の基礎を身に付ける事が、将来GKとして専門性を高めていくために大事ではないだろうか?心も身体もある程度成長した後に、個人の成長に合わせてU-12やU-13頃から徐々に専門性を上げていくのでも遅くはないはずだ。

参考文献
- Das technisch-taktische Anforderungsprofil des modernen Fußballtorwarts Rechner & Memmert, 2010)
- Visuelle Antizipation und Entscheidungshandeln in den Sportspielen (Florian Schultz, Jörg Daniel & Oliver Höner,2018)
- Sportspiele und visuelle Leistungsfähigkeit – Bochumer Perspektiven (Gernot Jendruch, 2009)
- ドイツサッカー協会第二回スポーツ科学カンファレンス2013 公開資料
- ドイツサッカー協会GKコーチ養成講習会内容
グラフィック作成;ドイツサッカー協会ホームページ

※こちらも合わせてご覧ください
GKのフレームワークと各状況における原則~GK練習のための状況整理~
https://fcl-education.com/training/gk-framework/


落合 貴嗣 / Takatsugu Ochiai
1989年生まれ 29歳

日本大学文理学部体育学科を卒業後、2012年に渡独。
ドイツ・ケルン体育大学にてスポーツ科学を学びながら、当時U-19ブンデスリーガ・ウェストに在籍していたSCフォルトゥナ・ケルンU19のGKコーチに2015年に就任。
現在は同クラブのGKコーディネーターを兼任してGK育成コンセプトを作成するなど、ドイツ協会公認の育成アカデミー、通称『NLZ』としての認可を受けるための活動をしている。
SNSで情報発信も行なっている。

Blog: https://ameblo.jp/takatsugu-0413/
Twitter: https://twitter.com/takatsuguFC

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