2017.09.04
アルゼンチンサッカーにおけるエンガンチェ(トップ下) 各ポジションに求められるスキル
4-4-2のダイヤモンド型のフォーメーション。アルゼンチンではこのシステムが各クラブが取り入れる最もベーシックな形式です。歴史的背景の影響もありますが、戦闘民族アルゼンチンでは各ポジションでスペシャリスト=「個」の強さが求められます。前回も述べましたが、文化的にアルゼンチンでは、相手に負けないという勝者のメンタリティを持つ前提で各専門職が集まり、同じ目的に向かってプレーをします。
エンガンチェ(トップ下)の重要性
アルゼンチンでサッカーをする選手全員が憧れるポジションが「エンガンチェ」と呼ばれるトップ下のポジションです。チームで最も能力が高く、信頼度が厚く、攻撃センスに優れた選手が選ばれます。
現代サッカーでは、FCバルセロナモデルの組織的サッカーに変わり「トップ下」と呼ばれるポジションが失われつつあります。司令塔であり、ゲームメーカー。試合を決定づける選手が年々減少しているという見方もアルゼンチンでは少なくありません。
アルゼンチンでも、組織的サッカーを求めるクラブが増えたことによって「エンガンチェ」が育たないことが問題視されています。これまでのアルゼンチンでは「マラドーナ」、「リケルメ」、「アイマール」のような選手がエンガンチェとして国を統率してきました。
フォーメーションを4-4-2のダイヤモンド形式にすることで、5番の守備的ボランチをボール奪取に徹底させ、よりエンガンチェに守備の負担をかけさず、攻撃に力を入れさせるという役割分担が明確になっています。
エンガンチェに求められるスキルは様々です。先ほど挙げた3名も、タイプはバラバラですが、共通して言えるポイントは「時間を操ることができる司令塔」です。どんな状況でも、彼らがボールを持つと観客はドキドキし、何かを演出するプレーをする。
ストリートサッカーでの経験で培った「ひらめき」と「創造性」を持ち、相手の意表を突くプレーをしゲームをひっくり返す。エンガンチェは攻撃の心臓でありエンガンチェこそがチームの戦術です。
攻撃の起点となるための「オフェンス的リトリート」=「味方の上がる時間を作る」ことや、フィニッシュゾーンでの決定的スルーパス、自ら仕掛けてゴールを決める決定力、セットプレーなど攻撃的項目において責任は重大です。
逆に言うと、攻撃的部分に関して結果を残せない選手はエンガンチェとして失格であり、翌週の試合ではポジションを失います。奪ったボールはとりあえずエンガンチェに預けておけば大丈夫、という考え方がアルゼンチンの国内はもちろん、育成の中でも浸透されています。
日本国内では組織的サッカーが基本。どの選手も似たような選手が育ち、チームのために戦う。素晴らしいことでもありますし、それが日本のカラーではありますが、育成という概念でアルゼンチンのエンガンチェは何か鍵を握っている重要なヒントであり、今後の日本サッカーにおける課題かもしれません。
こちら、ファンロマンリケルメのプレ―集になりますので、イメージを沸かせて下さい。
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執筆者
FootballCoachingLaboratory編集部