記事

2017.03.22

根性論と精神論は何が違うのか~心技体を分けて考えることはできない~

根性論と精神論は何が違うのかも今回で最終回となります。結論から言ってしまえば根性とは頭脳で生み出すものではないので、そもそも根性とは論ずるものではなく、逆に精神とはまさに頭脳で作られるものであるがゆえに論であると言えると思います。最終回ではこの根性、精神論とよく使われる「ハングリー精神」についてお話をしたいと思います。 

本当に日本人はプレッシャーに弱いのか

世界大会などでよく聞かれるのが「日本人プレーヤーは本番に弱い」という言葉。心技体という言葉についても、これも多くの解釈は「心」が一番大事なのだ、というような事をよく耳にしますが、心技体という言葉は優先順位に並べてあるわけではありません。

精神と心はどちらが重要ですか?という質問は、理性と本能はどちらが大事ですか?というくらい質問としては的外れと言えます。なぜなら理性と本能はいうならば相性、相克の関係であり、切っても切り離せない関係と言えるからです、そしてこの精神と理性は肉体がなければ存在しないというのは動物としては自明と言えます。精神と心も言うならばこの理性と本能の関係と言えるからです。

「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」とは実に的を得ている言葉と言えます。メンタルは弱いけど肉体は強い、メンタルは強いが肉体は弱いとはあり得ないと考えられます。

情熱とは理屈ではありません。心底から湧き出る感情であり動物の行動のエネルギーと言えます。ハングリー精神という言葉でいうならば「ハングリー」に値する物です。ただし感情だけに身を任せていてはただのカオスとなり人間としては機能しなくなるのです。そこで理性と言う精神の出番になります。ただし厄介なのは精神とは絶対的ではなく本能と言う心を全てコントロールできるわけではありません。

スポーツとは常に矛盾を含みます。個人競技にしろ、団体競技にしろ、記録の更新や他者との競い合いから勝者と敗者が生まれます。負けて悔しいから更なる努力をするのか、勝って心地いいから更なる努力をするのか。最後は勝ちたいという気持ちが強いものが勝つ。ではなぜ勝ちたいのか?勝っても負けても損得勘定抜きにして全身全霊尽くしたときにはやり遂げた、という満足感を味わえるものです。

トップアスリートでも心技体がバランスよく整っている人に共通しているのは「姿勢がきれいであり、息が乱れにくい」と言うことなのです。姿勢が歪んでいれば息遣いも乱れ、発言や行動にもまとまりがなくなります。プレッシャーとは自分自身のストレスの処理が不適切のときにおこる現象と言えます。ハングリー精神とは理性と本能のバランスの話でしかありません。感情に振り回されず、かといって口先だけの頭でっかちでもない。そしてそのバランスをうまくとるためには息が乱れにくい姿勢と、姿勢が歪みにくい呼吸を身に着けることが必要となるのです。

精神と根性、そして肉体の調和。精神、心、肉体のそれぞれの強化や学習を個別に行うことが現代の主流になっていますが、仮に個別に改善できたとしてもそれらが統一されずにバラバラになってしまっては逆効果になってしまうのです。

次回からは更に心、技、体、でなく、心技体とするためのその具体的な方法などをご紹介していきたいと思います。

執筆者紹介
内田真弘 
1970年3月10日生まれ

神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科  教員
横浜国際プールはりきゅうマッサージ室    室長
筑波大学 理療科教員養成施設       非常勤講師
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科    非常勤講師
東京衛生学園専門学校 臨床教育専攻科     非常勤講師
ヒューマンアカデミー横浜校 トレーナー科     非常勤講師

ドイツ VPTアカデミー 認定 スポーツフィジオセラピスト
ドイツ VPTアカデミー 認定 PNF 

神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業後、ドイツ、フェルバッハにあるVPTアカデミーフィジオクラスに招聘され、スポーツフィジオ、マニュアルセラピー、PNFなどのアシスタントを務め、帰国後は各種専門学校での講義、治療院での患者さん、アスリートの治療、指導にあたる。日本サッカー協会主催の第56回サッカードクターセミナーでは「スポーツ競技に対するゼロ式姿勢調律法の有効性」を講義。神奈川体育センター主催のアスリートサポート講座での姿勢と呼吸についてのセミナーや、神奈川県体育協会主催での「PNF]セミナーなど各地で講演なども行う。指導しているアスリートもプロ野球、スピードスケート(オリンピック日本代表選手)、フィンスイミング日本代表、プロボクサー、サッカー、レスリング、テニス、ダンスと幅広く行う。

RELATED関連する他の記事
PAGE TOP