栄養論 栄養素

2017.02.24

少年スポーツ選手の鍵となるミネラル(鉄)後編

先月に引き続き、鉄の吸収について根本的な間違いが非常に多くそのことが鉄欠乏性貧血を治りにくい病気にしていると言っても過言ではありません。

鉄吸収のメカニズムは少し分かり辛いところもありますが、ここを理解すれば鉄欠乏性貧血は治ったも同然といえると思います。

分析上、鉄含有量が多くても、十二指腸で消化されていなければその鉄は吸収されない

第三の間違いは、分析上の食品に含まれる鉄含有量が高ければ、鉄吸収量が高くなると考える間違い。

ひじきなどの海藻類やキノコ、豆類、種実類には鉄分を多く含むものがあります。しかし鉄は十二指腸でおもに吸収されますので、これらの消化されにくい食品は鉄吸収の対象となることはありません(海苔など薄く表面積の大なるものは胃液で鉄が溶出するため、鉄分は吸収される可能性はあるが)。

特に、豆類のようにタンパク質を多く含む炭水化物、ナッツ類のように油分の多い炭水化物、肉類のように脂分の多いタンパク質などの鉄分はほとんど十二指腸では消化されておらず、食品に含まれている鉄も吸収されることもありません。

また、鉄は他の多くのミネラルと異なり2段階のステップを経て体内に吸収されます。まず鉄は十二指腸絨毛細胞に取り込まれ一旦蓄えられます。その後、肝臓からの指示により体内に取り込むか否かがコントロールされます。

血液中の鉄濃度が低いと十二指腸絨毛細胞に蓄えられた鉄は体内への入り口(絨毛細胞の出口でもあり、フェロポーチという)を通して体内にとり込まれます。

血中の鉄濃度が高くなると肝臓からヘプシジンというホルモンが分泌され、このフェロポーチンを破壊してしまい鉄は体内にとり込まれなくなってしまいます。

結果、絨毛細胞に蓄えられていた鉄は細胞の脱落とともに腸管内に数日中に排泄されてしまうのです。フェロポーチンが一旦破壊されると元の鉄を通すことができるまで回復するのに3日かかるといわれています。

ヘム鉄と非ヘム鉄は十二指腸絨毛細胞膜にある別々の専用入り口からとり込まれ、ヘム鉄はそのままの状態で、非ヘム鉄はイオン化された二価鉄だけがとり込まれます。

植物性食品中の鉄は三価鉄で存在しているため、還元作用のあるビタミンCやキレート作用のあるクエン酸はさらに鉄吸収率を上げます。お勧めは、葉物野菜と一緒にご飯などの炭水化物を甘さを感じるまでよく噛むことです。

逆に、リン酸(卵、牛乳、チーズなど)、シュウ酸(長ネギ、ほうれん草、タピオカなど)、タンニン酸(茶葉など)は二価鉄イオンと非常に反応しやすく、鉄の吸収を阻害します。また、乳・乳製品などカルシウムの多い食品や鉄以外に多くのミネラルを含むサプリメントは鉄と干渉しあうため鉄の吸収を阻害します。

なお、非ヘム鉄は鉄を吸収するためには食べたものが胃液で充分に酸性になることが必要で、食前の水分の取りすぎや牛乳、胃薬(制酸剤)は好ましくありません。

このように、非ヘム鉄は食事のとり方などによって鉄吸収率も異なりますが、鉄欠乏時にはおおよそ30~50%と考えておくと良いと思います(条件が整えば、ほぼ90%以上が吸収されるようです)。ヘム鉄については食事のとり方による影響は受けにくいのですが20~30%程度と考えておくといいと思います。

鉄製剤を増やしても、副作用は増すばかりで、鉄吸収率にはほとんど影響しない。

第四の間違いは、鉄製剤は多く投与するほど多く吸収されると思っていること。(医師側の問題)

病院で鉄欠乏性貧血と診断されると、鉄製剤が投薬され、効果がなければ服薬量を増やしていきます。ところが便は真っ黒に、胃腸障害は悪化するばかり。

これは、先に説明したように、肝臓が血液中の鉄濃度が高くなったことを感知すると、体内への鉄とり込みを中止し、その後服薬する鉄製剤はほとんど効果なく胃腸障害を悪化するだけの結果となるのです。 

逆に、鉄製剤も極々微量をとり続けると副作用もなく効果もあらわれます。非ヘム鉄の吸収率を5%程度とするのは臨床医サイドからの間違った情報のせいかもしれませんね。

このように、間違った知識が氾濫し、間違った改善指導がなされているのが現状です。そのために鉄欠乏性貧血が治りにくい病気といわれる原因になっているのです。

葉物野菜類や貝類の摂取量が少なく、乳・乳製品、精白穀類、肉類に偏った食事が鉄欠乏性貧血の原因ということなのです。

なお成長期は動物性タンパク質もカルシウムも不足させてはならない栄養素ですので、魚介類や肉類も適量を摂り、カルシウムには干しえびや丸ごと食べれる小魚類がお勧めです。

※鉄含有量については「5訂増補 食品成分表」より引用

執筆者紹介
後藤 日出夫(ごとう ひでお)
1946年福岡県生まれ

工学博士 分子化学研究所(Advanced Prophylactic Support Lab)代表
米国ボルグワーナーケミカル社中央研究所、R.S.インガソール研究所。ゼネラルエレクトリック社中央研究所などにて、高分子ポリマーの合成やレオロジーの研究に従事。米国生活以降、多くの慢性的な疾患を発症するも治癒することなく、薬漬けの生活を長きに渡り過ごす。米国最新医療をもとに、各疾患の発症原因とメカニズム、治療方法を分子レベルの化学反応として捉える調査研究の結果、”食の恐ろしさと重要性”を痛感、試行錯誤の末、独自の疾病体質改善食事療法に辿り着き、数十年におよぶ疾患の全てを完治させた。
この自己体験に基づき、多くの人へ実践の輪を広げ、また指導できる仲間の育成を目的に「分子化学研究所(Advanced Prophylactic Support Lab)」を発足。多くの人が健康で楽しい人生を全うし、それを支える健全で安全な社会環境を築くべく日夜奮闘中。
著書「アレルギー・炎症誘発体質の真実」「片頭痛の治し方」「糖尿病がよくならない本当の理由」「女の子のクスリ」「脱認知症宣言」「鉄マグ欠乏症」などがある。

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