栄養論 栄養と体

2017.08.07

食べ物が喉を通っただけでは栄養摂取とは言えない

食べ物を口に入れ、咀嚼し、喉を通れば栄養を摂り入れたことになるのでしょうか?

「栄養摂取」というと、研究所における栄養成分分析で出された栄養価(数値)を、単純な足し算のように増やしていくイメージをお持ちの方が多いのですが、果たしてそうなのでしょうか? 一緒に考えていきましょう。

食べた物がしっかり吸収されてこそ栄養摂取となる

アメリカのことわざに、「We are what we eat」というものがあります。「私たちは、食べたものでできている」と訳されます。まさしくそうですよね、この世に生まれて以来何十年も維持されているあなたの肉体(骨・皮膚・筋肉・血液など)は、5年ごとに天から降ってきた新しいものと交換しているわけでもなく、はたまた他人から借りているものでもありません。日々の食事があなたの身体を作っているのです。

それに加えて最近は「We are what we absorption」、訳:私たちは、吸収されたものでできている、と言われることも多くなってきました。動物と植物の命を感謝の気持ちを持って食べることはもちろん重要ですが、それだけでなく「食べたものがしっかりと分解・消化され、吸収されたか」が、健康力を高めていくためにはとても重要になってきます。

あなたの身体の中は研究所内とは全く異なる状況である

研究所での栄養成分分析において「ヨーグルト100gにはカルシウムが120mg、玄米100gにはマグネシウムが110mg含まれている」といったものがあります。様々な食品において栄養成分の含有量を調べ、それらを電卓で足し算をするように5大栄養素の摂取基準を数字で満たそうとしているのが、日本の食生活への取り組みです(小学校の学校給食はその典型例ですね。栄養士さんは数字の足し算をして献立を決めています)。

ここで以下2つの状況を比較してみましょう。

①食べ物を個別に研究所で成分分析した状況(≒スーパーに並んでいる状況)

②食べ物が実際に喉を通り、複数の食べ物が強酸性下の胃の中で一緒になり、その後様々な消化酵素が働き、吸収される腸管壁にたどり着いた状況

上記2つは、食べ物にとって同じ状況でしょうか?

全く違いますよね。天と地ほどの違いがあると言っても過言ではありません。

サッカーのPKに例えて言うなら、①は全体練習後にあなたが一人残って黙々と個別練習をしている状況。何のプレッシャー(外部要因)もありません。

②は、県大会決勝戦、ここで勝てば全国大会の切符を手にする緊張感あふれる試合。スタジアムには5,000人を超える大観衆です。試合は同点に終わり、勝負の行方はPK戦に委ねられました。両チームのキッカー4人共がシュートを決め、最終キッカーであるあなたのキックに全てが掛かっています。ここで決めれば英雄、外せば戦犯という状況。プレッシャーが相当あります。

この①と②の状況では、PKを決められる確率は明らかに変わりますよね。プレッシャーのない状況で決められたからといって、プレッシャーのある場面で同じように決められるとは限らないのです。

このように、あなたの身体の中は研究所とは全く異なる環境であり、電卓をはじくような単純な足し算のようにはいかないのです。また咀嚼数・食べ合わせ・消化酵素の量・腸管壁の状況など、個人個人でも状況は全く異なります。

食べた物がしっかりと吸収されてこそ栄養となっていくわけですが、まず考える必要があるのは「吸収阻害要因」についてです。阻害要因はいくつもありますが、今回は身近なものを2つだけ取り上げます。

①カルシウムは鉄分の吸収を阻害する

カルシウムが豊富に含まれているものといって頭に浮かぶもの、それは牛乳を始めとした乳製品ですね。全国ほとんどの学校給食でも出されていますし、もしかしたらあなたのご自宅の冷蔵庫にもヨーグルトが入っているかもしれません。乳製品が鉄分の吸収を阻害し、貧血の促進や競技における持久力の向上を阻む可能性を秘めています。

※乳製品に期待するカルシウムやタンパク質の摂取は、魚介類や海藻類、大豆製品などをお勧めします。

②食品添加物(リン酸塩)は亜鉛の吸収を阻害する

代表的なものとしては、ハム・ソーセージ・加工食品・インスタント食品・スナック菓子・清涼飲料水などです。亜鉛は生命を維持や細胞の分化に関わる重要なミネラルであり、またインスリンの分泌に関与し、赤血球や白血球の細胞膜を安定させる働きもあります。ただでさえ吸収率がよくない亜鉛を吸収するためにも、なるべく食品添加物の少ないものを選択しましょう。

では逆に、吸収促進要因も2つ取り上げます。

①ビタミンCはタンパク質の吸収を促進する

筋肉を付けようと、肉や魚を積極的に摂っているかもしれませんが、ピーマン・キャベツ・ゴーヤなどの野菜や、キウイ・イチゴなどのフルーツも併せて摂っていくことが効果的です。

②クエン酸のキレート作用は、カルシウム・マグネシウムなどの吸収を促進する

「酸っぱいものはカラダにいい」、あなたも聞いたことがあるフレーズでしょう。クエン酸は、キウイ・イチゴ・レモン・グレープフルーツなどの酸っぱい果実や、梅干し・お酢などに含まれています。

食べ物やサプリメントのパッケージに書かれている栄養成分表の数字(表面的な情報)を追っているだけでは、栄養について考えたことになりません。食べ物が喉を通り、胃を通過し、様々な消化酵素が働き、腸管壁から体内に吸収される最終段階までの意識を巡らせ行動することが、あなたとあなたが関わるチームの健康力を向上させていくことに繋がるのです。

執筆者紹介
久保山誉 

□保有資格
NESTA(National Exercise & Sports Trainers Association)認定
ニュートリション(栄養学)スペシャリスト
ダイエット&ビューティースペシャリスト
シニアフィットネストレーナー
ファイトライフトレーナー協会認定 ファイトライフトレーナー

静岡県生まれ(1976年)。高校時代よりレスリングを始め、大学時代に総合格闘技に転向。総合格闘技「修斗」にて、世界バンタム級4位まで登りつめる。基本的性分として「めんどくさがり屋」であるため、格闘技時代の減量においても「いかに楽にできないか」「心と身体にストレスがかかりにくい減量法はないか」と常に模索を続ける。その傍らフィットネスクラブで働き続け、個別運動指導6,000回以上、個別栄養指導600人以上を実施。60回以上に亘る自らの減量体験と、クライアントの減量体験を体系化し、「いかに楽にストレスをかけずにボディメイクをするか」ということを、書籍「たった10個のルールで疲れ知らずの極上の健康を手に入れる食事術」とDVD「栄養素を考えない栄養学~なぜ栄養素にとらわれないことが、極上の健康に繋がるのか~」にまとめる

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