「楽しむ」ことと「楽する」ことの違い なぜトレーニングは必要なのかpart2

運動とスポーツは異なります。この区別をしておかないとスポーツ指導をするときには様々な障害が生じます。第二回目はジュニア選手への指導と、大人と言われる選手への指導をするときの差異についてお話を進めていきたいと思います。

何故大人になると鬼ごっこを楽しめなくなるのか?

第一回でもお話したように、人間の脳は「人間らしさを生み出す大脳新皮質」、その中でもとりわけ「前頭葉」が作り出す世界と、より野生の動物に近い本能を作り出す「大脳辺縁系」と「脳幹脊髄系」とのバランスから機能しています。

理性と本能、知性と感性、実は運動とスポーツの違いは、「運動をする脳幹脊髄系、大脳辺縁系」と「スポーツをする大脳新皮質」とのバランスにあるのです。

寝返りをうつ、立ち上がる、歩く、走る、くしゃみをする、物を食べる、瞬きをする、音楽を聞く、テレビを見るなど、人間の活動は筋肉活動・筋肉運動によって行われています。筋肉運動はそれが楽しいからするのが本質ではありません。生きるために備わっている基本的なOSのようなものです。

子供の頃は、無邪気に走り回れるだけで心の底から楽しめたのに、大人になり知性がつくと、「無邪気」という心からの喜びに蓋をしてしまいます。ある意味それは、人間として成長したという証でもあり、人間社会で生きていくには当然必要な事と言えます。

しかし、大人でも、子供の無邪気さを持っているアスリートほど一流といわれるプレーヤーになるのです。「名子役大成せず」とは、よく言われるジンクスともいえるものですが、実際は名子役でも後に名俳優、女優になる方もいます。なので、ここで言いたいのはあくまでも一流選手ほどバランスがいいと言えます。

これは理性と本能・知性と感性というバランスです。スポーツにはルールがあります。ルールという大脳新皮質が作り出した縛りがある中で、脳幹脊髄系が作り出す運動能力をそのルールに適応させる能力が高い選手がその競技で結果を出せると言えます。

子供の脳に大人の脳で指導をするということは、スポーツの基礎となる運動をする脳ではなく、スポーツをする脳に指導するという事になるのです。現代の流行は、どうしたら速く走れるか、などの理論ばかりが先行して、走る事は楽しいという本能を揺り動かすところへのアプローチが弱いように思えます。楽しくトレーニングや練習をしてきた選手ほど精神力は強いものです。

ただ、ここで勘違いされるのが「楽をすること」と「楽しむこと」の違いを指導者やコーチなどが言葉ではなく肉体で解っている方が、日本では少ないという事に問題の深さがあると言えます。

理不尽な、ただ歯を食いしばり苦しいことや辛いことに耐え忍ぶようなトレーニングや練習しかやってこなかった選手ほど精神力が弱く、バーンアウトや怪我が多いと言われています。

試合が楽しい選手と緊張ばかりで楽しくない選手の違い。子供の頃の鬼ごっこは足が遅くてもそれなりに楽しめたものです。運動に勝ち負けはありません。しかしスポーツは勝ち負けを争う事で喜びを得る物でもあります。

第三回ではいかにジュニア世代にトレーングを勉強ではなく遊ぶという楽しみにできるのか?について考えていきたいと思います。

執筆者紹介
内田真弘 
1970年3月10日生まれ

神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科  教員
横浜国際プールはりきゅうマッサージ室    室長
筑波大学 理療科教員養成施設       非常勤講師
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科    非常勤講師
東京衛生学園専門学校 臨床教育専攻科     非常勤講師
ヒューマンアカデミー横浜校 トレーナー科     非常勤講師

ドイツ VPTアカデミー 認定 スポーツフィジオセラピスト
ドイツ VPTアカデミー 認定 PNF 

神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業後、ドイツ、フェルバッハにあるVPTアカデミーフィジオクラスに招聘され、スポーツフィジオ、マニュアルセラピー、PNFなどのアシスタントを務め、帰国後は各種専門学校での講義、治療院での患者さん、アスリートの治療、指導にあたる。日本サッカー協会主催の第56回サッカードクターセミナーでは「スポーツ競技に対するゼロ式姿勢調律法の有効性」を講義。神奈川体育センター主催のアスリートサポート講座での姿勢と呼吸についてのセミナーや、神奈川県体育協会主催での「PNF]セミナーなど各地で講演なども行う。指導しているアスリートもプロ野球、スピードスケート(オリンピック日本代表選手)、フィンスイミング日本代表、プロボクサー、サッカー、レスリング、テニス、ダンスと幅広く行う。

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