2017.05.11
精神統一と心身統一 呼吸と息遣い
感動する、これは動物の生きるための基本と言えます。感じて動き、動いて感じる。いわゆる低次レベルでの反射ともいえるシステムですが、これがなければ生きることはできません。人間という動物は進化の過程においてここに思考、意図や意志を持つというシステムが加わり人間特有とも言える生活様式を手にいれて現在のような形になっているのです。「心で感じて頭で考える」しかし心と精神は肉体がなければ存在しないものと言えます。感じるためには肉体が必要となります。そしてその肉体をコントロールするために頭脳があります。しかしこの頭脳は心と肉体がなければ機能しません。「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」とはどういうことなのか。気持ちと体がバラバラになるということは誰にでも経験があるとは思いますが、本番に強い人と弱い人との違いはどこにあるのか。そのことについて今回はお話をしたいと思います。
腹を立てる人、肝が据わっている人
人間は感情の動物であると同時に人間は考える葦であるという精神の重要性を説く教え。
これはどちらが正しいのか?ということではありません。試合中に冷静さを欠く時とはどういう時か、武者震いとはどういう心境でどういう精神状態なのか。感情は理性という思考だけではコントロールは出来ません。試合で負けて悔しいという気持ちと試合で勝って嬉しいという気持ち、この相反する感情は表裏一体であり切り離すことは出来ません。
誰でも負けようとして試合に臨む選手はいないでしょうが、明らかに格上といわれる相手と試合をするときと、自分より少し格下と試合をするときと、どちらが試合をしやすいか?ホームとアウェイでは何が違うのか?プレッシャーとは相手からかけられるものではなく、自分の中での感情、思考そして肉体とのアンバランスから生まれるものといえるのではないでしょうか。昔から言われるように「本当の敵は自分の中にいる」という言葉は誰もが知っていますがそれを実践するとなると困難を極めます。
闘争心と平常心 怒りは一過性に困難を乗り越えるエネルギーとなりますが使い方を誤れば自分やチームメイトを傷つけるエネルギーにしかなりません。腹が立つ、胸がムカムカする、頭にくる、キレる。気とは上がりやすく 下げにくいものといえます。自律神経の交感神経と副交感神経においては、動物では行動するためには交感神経のほうが副交感神経より優位になりやすのです。交感神経と副交感神経は常にお互いを監視し合っているような関係でありこれも表裏一体であると言えます。どちらが良くてどちらが悪いというものではありません。
勝ちたいという気持ちと負けたらどうしようという不安との狭間にあって上がりすぎる気持ちは下げて、下がりすぎている気持ちを上げるためには何が必要なのか?しかしどんなに強い意志という精神力を持ってもこの「気」の上げ下げはできないのです。
声を出す 気合いを入れる 円陣を組んで声を出して腰をしゃがませるという行為には余分な気は吐き出してそして最後に腰を下げることで地に足をつけるという気を下げる行為といえるのです。心と精神という見えなく、手にとって触れないものは肉体という目で見えて手に取って触れるものからアプローチをする。そういう意味では日本では古くから写経や滝行などのいわゆる修行といわれるものは肉体からアプローチするメンタルトレーニングの代表とも言えます。
しかし現代的な人間機械論による要素還元主義によるトレーニングの考え方は単にこの手の修行といわれるものは単に精神力を強くするということを部分的に取り出す発想になりがちと言えます。
しかしこの精神力が強いとはたんに痩せ我慢やひたすら耐え忍ぶということではありません。やせ我慢、我慢強いということと精神力が強いという事はイコールではありません。単にやせ我慢をすることを身に着けた選手ほどバーンアウトといわれる燃え尽き症候群やオーバーワークによる怪我をしやすいものなのです。
本番に弱い人ほど呼吸が下手である。
呼吸が上手いアスリートと呼吸が下手なアスリート いい呼吸をしている人の息遣いは傍でそれを聞いていても心地よいものです。しかし悪い呼吸の人の息遣いは傍にいて非常に不快な気持ちになるものです。
チームの息遣いがいいチームは仮に試合に負けても次につながる負け試合になりますが、チームの息遣いが悪いチームは負け癖がつくチームなのです。精神統一と心身統一の最終回はでは具体的にいい呼吸と悪い呼吸とは何が違うのか?いい呼吸を手に入れるためにはどうしたらいいのか?についてお話したいと思います。
※こちらも合わせて読んで頂けると理解が深まります。
精神統一と心身統一シリーズ
第一回目 精神統一と心身統一 呼吸と姿勢の重要性
https://fcl-education.com/training/performance/fcl-posture-breath-mind-body-unified/
第三回目 精神統一と心身統一 顎を引き、脇を閉め、腰を入れる
https://fcl-education.com/training/performance/fcl-football-breath-posture/
執筆者紹介
内田真弘
1970年3月10日生まれ
神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科 教員
横浜国際プールはりきゅうマッサージ室 室長
筑波大学 理療科教員養成施設 非常勤講師
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科 非常勤講師
東京衛生学園専門学校 臨床教育専攻科 非常勤講師
ヒューマンアカデミー横浜校 トレーナー科 非常勤講師
ドイツ VPTアカデミー 認定 スポーツフィジオセラピスト
ドイツ VPTアカデミー 認定 PNF
神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業後、ドイツ、フェルバッハにあるVPTアカデミーフィジオクラスに招聘され、スポーツフィジオ、マニュアルセラピー、PNFなどのアシスタントを務め、帰国後は各種専門学校での講義、治療院での患者さん、アスリートの治療、指導にあたる。日本サッカー協会主催の第56回サッカードクターセミナーでは「スポーツ競技に対するゼロ式姿勢調律法の有効性」を講義。神奈川体育センター主催のアスリートサポート講座での姿勢と呼吸についてのセミナーや、神奈川県体育協会主催での「PNF]セミナーなど各地で講演なども行う。指導しているアスリートもプロ野球、スピードスケート(オリンピック日本代表選手)、フィンスイミング日本代表、プロボクサー、サッカー、レスリング、テニス、ダンスと幅広く行う。