栄養論

2019.02.18

運動指導者が栄養学を学んでいるだけではダメな理由 ③ ~土と人とスポーツと~

現代の栄養学は、栄養の本質からは大きく外れているということを前回&前々回でお伝えした。栄養の本質とは、動物と植物が持つ「生命力」について考えることであり、その生命力と切っても切れない関係があるのが地球環境である。

今回は、地球そのものとも言える「土」について、スポーツに関わるあなたと一緒に考えていきたい。

土は、あなたが思っている以上に身近であり、かつ重要な存在である。

あなたはどんなスポーツに携わっているのだろうか?

サッカー・野球・テニス・ゴルフ・アメフト・ラグビーのようなアウトドアスポーツであろうか?

それともバレー・バスケ・卓球・格闘技など、インドアスポーツであろうか?

もしアウトドアスポーツに携わっていたとしたら、あなたの靴の裏は、常に土と接し続けている。

また、もしインドアスポーツに携わっていたとしたら、あなたがプレー(またはサポート活動)をしている建物は、土の上にしっかりと建てられている。

何とも当たり前のことであるが、このように土はとても身近であり、かつ本当に重要な存在なのである。

なぜ重要と言えるのか、まずはその役割から見ていくことにする。

土はどのような役割を果たしているのだろうか

身近な存在である土が果たす役割について、あなたはどのくらい認識しているだろうか?

近くの公園に行って、手の平いっぱいに土を盛った場面を想像してほしい。土壌10gには、バクテリア細胞が約100万種、数にして約100億個が含まれると言われている。

また、土の中に生息する動物の数は約40万種にも上り、その他に菌類・植物を含めると、生物種の総数は、何と地球全体の約25%にも相当する。

そのように莫大な数の生物が生息する土が果たす役割は、主に4つ。

1. 食料生産の場の提供
2. 巨大な水の貯蔵庫
3. 地下水の水質保持
4. 大気微量物質の除去

これらについて掘り下げていくことにする。

食料生産の場の提供 ~あなたが毎日食べている野菜は、土から作られる~

あなたは一日に最低1品は野菜を食べていることだろう。キャベツ・ニンジン・玉ねぎ・トマト・大根・きゅうりなど。栽培される作物に水と養分を供給することが、土の最大の役割と言える。

あなたが毎日野菜を摂取するのは「ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富に含まれるから」という理由が多いと推測される。しかし、期待するビタミンやミネラルを摂取できていない可能性が高い、と言わざるを得ない。

なぜなら、土の力(養分)がどんどん低下しているからである。

1992年リオ地球サミットの公式報告では、「世界各地の農場や牧草地の土壌のミネラル値の継続的な下落には深刻な懸念がある。」と述べている。

過去100年間にわたり、土壌の平均ミネラルレベルが、ヨーロッパで72%、アジアで76%、北米で85%と、世界中で低下したというのだ。

ではなぜ、そんなにも土の力が低下しているのだろうか?

主に2つの要因が考えられる。

1.化学肥料の使用過多
2.農薬の散布

化学的に合成した肥料(リンや窒素)を農地に撒けば、微生物が有機物をゆっくりと分解・合成してくれる力を借りる必要がなくなり、植物の成長スピードを大幅に早められる。

また、農薬を散布することにより、病気・害虫・雑草の防除ができる。

しかし、そのようなメリットの裏には、土の中の微生物が激減するというデメリットがある。

微生物が減った土は固くなり、保水性も悪くなって痩せていく。それでは野菜の生育が鈍くなるため、さらに化学肥料が与えられる。

その繰り返しにより、農地にもともとあった力がどんどん衰えていくのである。

化学肥料を与え始めた当初は大きく伸びた収量も年々減り、その減少量を補うため、現在の日本の農地では平均してアメリカの2倍、ロシアの10倍以上もの化学肥料を使用しているとも言われている。

上記2点により、野菜に含まれる栄養も低下すため、「あなたが期待するビタミンやミネラルを摂取できていない可能性が高い」と言えるのである。

ここで、野菜だけでなく、あなたが食べている肉(牛・豚・鶏)について考えてみたい。あなたが毎日野菜を食べているように、牛・豚・鶏も毎日野菜を食べて育っている。

ということは、牛・豚・鶏も、野菜からしっかりとした栄養が摂れていない可能性が高い。

あなたが「よりよく生きたい」「健康力を向上させたい」と考えるならば、しっかりと栄養が摂れた生命力の高いお肉をありがたく頂くことが大切であろう。

もしあなたが、何かのスポーツを指導していたり、親として1人の人間を育てているとしたら、それは子供を未来に送り届ける立場にあるということである。

また、もしあなたが現役のスポーツ選手として自分のために日々努力を重ねていたとしても、同じく子供たちに夢を与え、よりよい未来を作り上げることに大きな影響を及ぼす立場にあると言える。

そのような立場にあるからこそ、表面的な情報にすぎない栄養学という狭い視点だけで栄養と向き合うのではなく、「地球環境」という広い視点を持つことがとても重要であると考えている。

巨大な水の貯蔵庫 ~森林伐採が、土の保水力を奪う~

土は、スポンジである。巨大な水の貯蔵庫として、動植物の成育に不可欠な水を供給し続けている。

また、降り注いだ雨が一気に河川への流出することを防ぐ機能もあり、それを「洪水の緩和機能」と呼ぶ。樹木の根っこは、網をかけたように土を束ね表層の浸食・崩壊を防いでいる。

ここで、水の貯蔵と関係の深い森林伐採について考えてみたい。

地球上の森林が1日にどのくらい失われているか、あなたはご存知であろうか?

東京ドーム10個分? いや100個分? いやいや1,000個分?

答えは・・・なんと、たった1日で「東京ドーム約3,000個分」に相当する森林が失われているのだ。

※年間では約520万ヘクタール。九州と四国を合わせたほどの面積。

森林が減少している最大の原因は、農地・牧草地への転用である。

世界の人口が増加し続けているため、仕方のない部分もあろう。しかし、大豆・トウモロコシ・パーム油など、営利を追求するための過度な伐採も森林減少の大きな原因と言われている。

※大豆・トウモロコシは遺伝子組み換えとして、パーム油はファストフード、ポテチ・アイス・チョコレートなどのお菓子、冷凍食品・カップラーメンなどの即席食品に利用されている。

森林とはやや異なるが、熱帯や亜熱帯地方に生息しているマングローブについても触れておこう。

マングローブは陸と海にまたがって、様々な生物に不可欠となる生息環境を与えている。

そのマングローブも減少の一途をたどっており、原因は水産養殖・パーム油プランテーションの拡大である。
※養殖されているほとんどがエビ。その最大の輸出先は、他でもない「日本」である。

森林減少対策というと、問題が大きすぎて「個人ではどうしようもない」と感じるかもしれないが、遺伝子組み換え食品やお菓子・即席食品など、私たちの日々の選択(何を買い物かごに入れるのか)も大きく関わっているのである。

地下水の水質保持 ~土は自然のろ過材~

ミネラルウォーターをゴクリ。

あなたも身体に入れるお水には少しばかりこだわりを持っていることだろう。

採水地はどこか、硬水か軟水か、pHはいくつか、など。

雨水が土を浸透する間に、多くの汚染物質は土の吸着・分解機能によって除去される。

金魚や熱帯魚を飼っている方は、水槽に設置してあるフィルターをイメージするとわかりやすいだろう。それと同じことをやってくれているのである。

それにより、地下水の水質保持に繋がっている。

また、土壌中のミネラル成分などが適度に溶け出すことにより、軟水・中硬水・硬水などバラエティーに富んだおいしいミネラルウォーターを頂くことができるのである。

大気微量物質の除去 ~土が空気清浄機の役割を果たす~

前述した土の吸着・分解機能は、大気中の汚染物質にも作用し、様々な大気微量物質(窒素酸化物や浮遊粒子状物質)を除去している。

この機能を利用して、自動車などからの排気ガスを、土壌によって除去する技術が既に実用化されているのである(浄化効果90%以上。自動車の往来が激しい幹線道路沿いやその近くの公園に「大気環境改善 土壌浄化施設」というものが設置され始めている)。

世界の大気汚染は深刻さを増している、ということを「運動指導者が栄養学を学んでいるだけではダメな理由 ①」で取り上げた。

大気の状態が少しでも良くなるよう、日本の高い技術の結晶である土壌浄化施設が、世界へと広がっていくことを願わずにはいられない。

土とスポーツと人間と

私たち人間だけでなく、数えきれない動植物が生息しているこの地球。

その陸地を覆う土壌が豊かでなければ、人類文明だけでなく、豊かな生態系も成り立たないというのは明白である。

このまま化学肥料・農薬の過剰投与や、農地・牧草地への転用のため森林伐採が続いていったら、未来の地球は今以上に「病い」「自然災害」といった形で私たち人間に警告を発するであろう。

ゆえに運動指導者やスポーツ選手は、目の前にある水や食べ物の栄養だけを学んでいてはダメであり、その背景にある地球環境にこそ目を向け、「50年後の地球にとってよりベターな生活、食習慣はどのようなものか」ということを、本気で考え行動していく必要があるのではないだろうか。

 

※こちらも合わせてご覧ください

運動指導者が栄養学を学んでいるだけではダメな理由 ① 空気と人とスポーツと
https://fcl-education.com/nutrition/air-sports/

運動指導者が栄養学を学んでいるだけではダメな理由 ② ~水と人とスポーツと~
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/human-water/

栄養素を考えない栄養学 豊かな自然があってこそ、豊かな栄養が得られる
https://fcl-education.com/nutrition/nutrition-body/fcl-nutrition-nature-performance-up/

 

執筆者紹介
久保山誉 
□保有資格
NESTA(National Exercise & Sports Trainers Association)認定
ニュートリション(栄養学)スペシャリスト
ダイエット&ビューティースペシャリスト
シニアフィットネストレーナー
ファイトライフトレーナー協会認定 ファイトライフトレーナー

静岡県生まれ(1976年)。高校時代よりレスリングを始め、大学時代に総合格闘技に転向。総合格闘技「修斗」にて、世界バンタム級4位まで登りつめる。基本的性分として「めんどくさがり屋」であるため、格闘技時代の減量においても「いかに楽にできないか」「心と身体にストレスがかかりにくい減量法はないか」と常に模索を続ける。その傍らフィットネスクラブで働き続け、個別運動指導6,000回以上、個別栄養指導600人以上を実施。60回以上に亘る自らの減量体験と、クライアントの減量体験を体系化し、「いかに楽にストレスをかけずにボディメイクをするか」ということを、書籍「たった10個のルールで疲れ知らずの極上の健康を手に入れる食事術」にまとめる。

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