2018.06.26
様々なGKスタイルと変わることがないGKの役割~ゴールキーピングと準備と実行~
GKの役割が変わる要因に、その国々におけるものの考え方やルールの変更、チーム戦術からの要求などが挙げられ、そうした変化の中でGKは様々なスタイルを確立してきた。
様々なGKスタイル
歴史的に見ると、GKはゴールエリア付近を主戦場とする反応型GKからDFライン裏のスペースをカバーする予測型GK「スイーパーキーパー」のタイプの出現という流れを見ることができる。
GKが手を使える範囲がペナルティエリア内に限定されると、主な役割はゴールエリア付近でボールを待ち構えシュートを止めることになった。
ルールの改正がGKをチームにとっての「第三者的な存在」として見なすことに繋がり、持ち場を離れた安定性に欠けるプレーではなく、安心安全を求める保守的な考えとしての「ゴールキーピング」が求められるようになったのだ。
反応型キーパーでは、「ポジショニング」によっていかにシュートを防ぐことができるか、が主な関心として寄せられていた。
その後「予測型GK」が生まれるのだが、その背景には「危険を察知しピンチを未然に防ぐ為にいる」という役割を見出し、「セービングをしなくてもゴールは守れる」という論理的思考や「チーム戦術」からの要求が関係していると言える。
GKは「もう一人のディフェンダー」として、DFライン裏のパスやルーズボールを処理し相手のチャンスの芽を摘む為のプレーも行うようになっていった。
リスクも伴い不用意なポジションのせいで頭上を越されるシュートを打たれたり、判断を誤り失点する事もあったようだが、かつてのGKにはFP出身者や兼任できる者が多かったこともあり、GKとしてのタスクがペナルティエリア外にまで拡張するということは、ある種必然的であったと言える。
バックパス廃止とGKの役割の変化
元々、バックパスによる時間稼ぎをよしとしない傾向はあったが、90年イタリア大会での(アイルランド代表ボナー選手の)あからさまな時間稼ぎ行為により批判は高まり、興の妨げを危惧したFIFAが94年アメリカ大会での観客動員や放映権料など興行面に目を向けた事により施行された。
新たなルールを盛り込む事には競技上の「時間稼ぎ」の防止と「興行志向」の2つの側面があったということは注目に値する。
こうして、それまでのリスク回避的なバックパスを足元で処理しなければならなくなり、ゴールキーピングに加え正確な足元でのプレーがタスクとして加わった。
そして、バックパスをただ蹴り返すだけではなく、ビルドアップの要としても戦術に組み込み「攻撃的な役割」を与えた事が、GKを「ゴールを守る」だけの存在としてだけではなく、「攻撃の起点」を作る重要な存在としての認識にも繋がり、要求は益々高まったと言えるだろう。
ゴールキーピングと「準備」と「実行」
国際大会での得点パターンを例に挙げると、近年の分析結果から明らかとなっているのは、「PA内でのゴールが全体の7割、尚且つ9割がワンタッチでのシュートである」という報告だ。
これはGKのタスクが「シュート」と「クロス」への準備及び対応である事を意味している。
チームの一員である以上、チーム戦術からの要求でスペースのカバーや、ビルドアップの参加など様々なことが求められる訳だが、最も大事なことは向かってくる相手、ボールに対して的確な判断の下でプレーする「ゴールキーピング」の更なる進化だ。
それには「準備」と「実行」の2つのタスクがある。
「準備」とは、状況把握とその為に必要な「見る聞く」等の情報収集、ポジショニング・視野の確保・構えがある。
また同時に頭の中では次の展開やプレーの予測といったこれら一連の作業を繰り返し行い対応する為の状況を把握し続け、そこから選択されたプレーを「実行」するのだ。
シュートストップにはセービングやステッピング、パワー、俊敏性も併せて必要になる。
ハイボール等の他の技術にもそれぞれに確実に行えるテクニックは必要となり、これらの能力は常に向上させなければならない。
重要な存在としてのGK
歴史的に見れば重要視されていなかった時代もあるGKであるが、現代のサッカーにおいてGKは欠かせない存在である。
そして、その真意はやはり「ゴールキーピング」と言えるのではないだろうか。
参考文献
「孤高の守護神ゴールキーパー進化論」ジョナサン・ウィルソン/実川元子 訳
※こちらも合わせてご覧ください
サッカーをより面白くする存在 ゴールキーパーという唯一無二のポジションについて考える
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/goal-keaper/
GKトレーニングを全てのフィールドプレイヤーのトレーニングに キャッチ&セービング編
https://fcl-education.com/information/knowledge-practice/gk-training/
執筆者
池田朋也
日本サッカー協会 公認D級コーチ
WORLD FOOTBALL ACADEMY JAPAN公認フットボール ピリオダイゼーション Basicコース
18歳の時にブラジルへのサッカー留学を経て、その後は神奈川県1部リーグのクラブに所属しながら、育成年代のGK指導を中心に活動中。