スペインと日本の比較~プレーモデルと今後の可能性について~

スペインリーガーは、試合中に何を考えてプレーしているのか。

選手それぞれによっても状況によってももちろん考えていることは違うが、共通して言えることは常にたくさんの選択肢を持って プレーしていることである。

たくさんの情報を汲み取った上で、総合的に見て、手に入れるべき目的に最適なものを選び、プレーに繋げる。

まず、それぞれのプレーモデルやシステムにおいて、ピッチの中に味方がどこにポジションをとっ ているのかを常々把握する能力が格別に高いのもスペインリーガーの特徴だ。

いわゆる”認知力”である。

筆者は、カタルーニャ地域のクラブに所属する各年代の選手(U-12~プロ、セミプロレベル) をランダムに5人ずつ選び、簡単なインタビューを行った。

その約9割の選手が、「プレーする時 に考えていることは何か?」という大まかな質問に対し、「まずは状況を知ること」と答えた。

これは育成年代からトップカテゴリーまでの選手が、状況を認知する力の重要性を理解していることを示している。

つまり、試合の中で、誰が、どこにいて、どのタイミングで走り出すのかを90 分間常に把握しながらプレーしているということである。

ジョルディ•アルバのどこからともなく 湧いて出るオーバーラップに、イニエスタやメッシが見事にスルーパスを通すプレーはこの”認知力”に基づいたものであると考えれば納得がいく。

その認知力に付け加え、時間帯や試合展開、コ ンディションなどの軸とトータルで考え、今現在の最適なプレーを選択する。

もちろん、選択肢は多彩にあるので、その中から判断する訳であるが、このプレーだと思った時の決断力が優れているのがリーガで信頼を得る選手の特徴かもしれない。

日本で言われる判断というイメージより も、”決断”と言った方が意味が近い。

いくらポゼッション志向の強いチームでも、この状況でボー ルを繋ごうとして、ショートパスを選択するより、相手の裏にロングボールを入れた方が、例えボー ルを失ったとしても、目的を達成するに値するプレーであると思えば、いち早く決断する。

スピード感のある展開やインテンシティの高いゲームは、このような状況下で生まれ、攻守が目まぐる しく切り替わる。

相手が前からプレスをかけてくるということは、中盤もディフェンスラインも距 離を縮め、押し上げているから、ディフェンスラインの裏にスペースができるという基本セオリー に基づいたものであることも前提である。

その場合、ボールを高いゾーンに運び、相手陣内にボー ルと人が前進するための一つの策となり、他にも解決方法は無数にある。

フィジカル能力にも、他の国とはまた違った特徴が見られる。

というのは、このポジションに は必ずこの特徴を持った選手という暗黙の了解がない。

その人選も全て監督の考えるプレーモデ ルに依存するからである。

指導者の数も多ければ、目指すスタイルも十人十色で、日本よりもそれぞれの異なり方の差が大きい。

私自身、バルセロナのカンテラ(育成組織)の試合を見ても、 なぜあの選手が試合に出ているのか、なぜあの小さくて華奢な選手がそのポジションにいるのか、 理解のできないことが多々ある。

その監督の戦術に合わせたフィジカルを使い、プレーするといっ た感覚である。

その点を考えれば、日本人のような世界的に決して体格に恵まれていない民族でも、監督のベクトルに沿った形で、自分の身体的特徴を活かせば、より高いレベルでもプレーが 可能であることを示唆している。

一つのヒントと捉えるべきかもしれない。 

さて、最後に、キャリアについて論ずる。

日本サッカー界の特徴として、高校卒業時の18歳と、 大学卒業時の22歳で進路の選択に迫られ、その進路にサッカーを続けるかどうかの選択肢を含める。

スペインではレベルが達すれば何歳であろうがトップレベルにまで辿り着く可能性がある。

それは、16歳で目が出る選手もいれば、30歳で活躍する選手もいるという現実的な個人差やタイ ミングからすれば、妥当な話である。

常にリーグ戦という毎週の試合でスカウトの目に晒され、 上のレベルのクラブに移籍する機会を虎視眈々と狙っているのである。

そして、それを可能にするのは、仕事を持ちながらサッカーをするというセミプロ志向な文化である。

日本のように終身雇用で安定した職に就くことが、あまり多くないスペインであるが故であることは間違いない。

しかし、文化や風習という言葉で片付けてはならず、日本のフォーマルなルールの中でスペインの良いところを順応させていかなければならない。

今の時点でそれを体現化した者は一人もいない。

今後、スペインに限らず、国境を超えた日本サッカーの発展を望むと共に、一人でも多くの日本人 フットボーラーが世界に認められる日が来ることを期待したい。

※こちらも合わせてご覧ください

選手が語るスペインのサッカー 現場から知識を紡ぐことの重要性
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/spain-football-real/

日本とスペインの違い 目的を明確にし意図を持ってプレーする習慣化の重要性
https://fcl-education.com/training/performance/spain-football/

 

執筆者
今村匠実

慶應義塾大学政策・メディア研究科にて、スポーツ心理学、社会学を専攻し、修士号を取得。
柏レイソルユース・流経大柏、慶應大学など、名門チームでプレーし、全国優勝を経験。
文武両道をモットーに、スポーツのみらず、学校の勉強や課外活動にも力を注いできた。小学校二年生時に作文「オーイ、じいちゃん」で厚生大臣賞を受賞(日本一)したことをきっかけに毎年作文での全国区での受賞を続けた。

現在は、海外のプロリーグでプレーしながら、TERAKO屋学習教室(2011)、株式会社G.M.A(2015)、TWINKLES (2016)、TAKUMIアスリートアカデミー(2016)を設立し、多岐にわたる活動に勤しむ。

【職業】
スペインリーグMasnou C.Dでプレー
TWINKLES Director(CEO)
株式会社G.M.A 取締役
TERAKO屋学習教室 代表
TAKUMIアスリートアカデミー代表

【競技歴】
柏レイソルU12.U15
流通経済大学付属柏高等学校サッカー部
慶應義塾大学
Brisbane Force(オーストラリア2部)
Onehunga Sports(ニュージーランド1部)

 

 

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