欧州サッカー文化の日常化 日本とスペインの大きな差とは

フランスの優勝で幕を閉じたワールドカップ2018ロシア大会であったが、ベスト4にはフランス、 クロアチア、イングランド、ベルギーとヨーロッパ勢が上位を独占した。

そんな中、ネットやSNSを使い、昨今のサッカーのトレンドを分析し、解説する者が増え、データの活用が一般の方でも簡単に見ることができるようになったのも、最近の傾向ではないだろうか。

日本人のスペインサッカーに対する理解の現状

そして、書店の本棚、ネットでのオンラインブックは、ヨーロッパで学んだ日本人指導者のものが増えている事もまた流行りであろう。

特にサッカーを分析するためのツールとして、国を挙げて指標を作り、学問としているのは、世界一のリーガエスパニョーラを持つ、世界屈指の戦術大国スペインであり、スペインでの学びを日本人に伝えようと活動している者が目立つ。

しかし、日本で一般的に販売されている書物のほとんどは、スペインサッカーの戦術解説と題した、小手先の1作戦に過ぎない。

実際に筆者の住むバルセロナでは、サッカー学校に行けば誰もが勉強し、資料として配られるものをスペイン語からカタカナに変え、特殊な文字列を一見かっこよく、目新しく見せ、あたかも革新的な戦術を扱ったトレンディなものと思わせる文章も多い。

その読み物自体、実は日本のサッカー初心者に向けたものであり、必ずしもプロのコーチに向け た信憑性の高いものではない。

それは、サッカーの見方を多様にし、サッカーファンがよりたくさんの楽しみ方ができるように提供するサービスで、普及という観点では非常に良い試みである。

しかし、スペインサッカーが世界一である所以は、バルで試合を見るサッカーファンたちが、そのような戦術的なことを老若男女問わず更にマニアックに知っていて、サッカーの見方が皆上級レベルであるという点にある。

つまり、根本的なサッカー文化という点で大きなレベル差が日本とスペインにはあり、長い年月をかけて出来上がった歴史の差に他ならない。

ローマは1日にしてならず、ならぬ、バルセロナは 1日にしてならず、と言えるかもしれない。

毎日サッカーと共にする生活

鈴木、戸苅(2004)は、「競技人口において他のスポーツ種目の追随を許さない大衆スポーツ・ サッカーは、時代を追うごとにグローバルな世界を形成し、今日ではスポーツビジネスの寵児と して日々流動し続けている。考えてみれば、”たかがスポーツ”の一競技種目にすぎないサッカー が、世界中の人々の心を占領し、揺さぶり、その感情の集団的吐露がエネルギーとなって熱狂空間を生み出す現象は、”競技としてのサッカー”という枠組みだけでは説明不可能である。つまり、” 文化としてのサッカー”という視点を抜きにしてその熱狂を理解することはできないのである」と述べている。

また、スペインのお隣フランスのサッカー文化と日本のサッカー文化を比べ、「Jリーグの試合に行こうと思うと時間がかかり過ぎる。Jリーグもあまり街中にスタジアムはありませんね。」 とダバディ(フットボールチャンネル 2016)は言う。

ここスペイン、バルセロナでも各地下鉄の 駅に必ずサッカークラブがあり、スタジアム付きのサッカー専用グランドがある。

選手は小さい頃から、家から徒歩圏内にいくつものクラブがある中でチームを選び、プレーできる環境がある。

そして、試合には近所の住人が散歩の足を止めてサッカーを見に立ち寄る。

「やはりサッカー文化が根づいている。例えば、スタジアムにも練習場にも必ずバル(カフェ) や小さいレストランがある。僕らは試合に行ってメンバー発表をして、子供たちが着替える間、バルに行ってコーチたちとミーティングや意見交換をする。そこには父兄がいたり、相手チームの監 督がいたりして、コーヒー片手に話ができる。試合後も、子供たちが着替えてバスに乗るまでの間に、相手のスタッフとコーヒーを飲んで話をす る。そこのバルでボカディージョ(スペインのサンドイッチ)をつくってもらって、帰りにバスで 子供たちのご飯にしたり。ボカディージョは、バルによって味が違うから、”今日のボカディージョ は当たりだぞ”と言われたりね。日本でもそういうことができたら、話が横にも伝わってくし、関 わる人数が増えていくけど、そういう部分がすごく少ない。オープンな場所が少ない気がします。」 とスペインに派遣されたJリーグコーチは語る。(livedoor NEWS 2018)

つまり、サッカースタジアムは、決してサッカー選手がプレーし、勝敗を争いにだけ訪れるもので はなく、地域住人の生活の一部としても成り立っているとも考えられる。

たとえ試合のない日でも、たくさんの人々がスタジアムのバルやカフェに訪れ、グランドでは子供たちが遊ぶ。

また、テレビ放送も、金曜に1試合、土日、月曜に1試合とリーガの中継があり、火水木とカップ 戦やチャンピオンズリーグが頻繁に中継される。

スペインの人々は毎日サッカーの何かしらの試 合を見ることができる。

サッカー文化発展あってこそのレベルアップ

要するに、スペインではサッカーそのものが生活していく上で常に共にある。

いやがおうでも毎日サッカーに触れることになり、そのサッカーが上手かったり、詳しかったりすることが最も人気者になるための方法なのである。

日本のサッカー文化はスペインに比べ、まだまだまだ発展途上にある。この文化という視点を抜きに、技術や戦術だけでは国のレベルアップについて語れないのかもしれない。

※こちらも合わせてご覧ください

日本とスペインの違い 目的を明確にし意図を持ってプレーする習慣化の重要性
https://fcl-education.com/training/performance/spain-football/

スペインと日本の比較~プレーモデルと今後の可能性について~
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/japan-spain-soccer/

 

<参考文献> 鈴木守・戸苅晴彦(2004)『サッカー文化の構図―熱狂の文化装置』道和書院

フットボールチャンネル(2016)『ダバディさんのサッカー文化論。スタジアム、スペクタクル。 人気拡大に必要な魅力の醸成』, <https://www.footballchannel.jp/2016/05/24/ post153838/> livedoor NEWS(2018)『「サッカー文化が根付いている」スペイン派遣のJリーグコーチが驚 き』<http://news.livedoor.com/article/detail/14842059/>

 

執筆者
今村匠実

慶應義塾大学政策・メディア研究科にて、スポーツ心理学、社会学を専攻し、修士号を取得。柏レイソルユース・流経大柏、慶應大学など、名門チームでプレーし、全国優勝を経験。文武両道をモットーに、スポーツのみらず、学校の勉強や課外活動にも力を注いできた。小学校二年生時に作文「オーイ、じいちゃん」で厚生大臣賞を受賞(日本一)したことをきっかけに毎年作文での全国区での受賞を続けた。現在は、海外のプロリーグでプレーしながら、TERAKO屋学習教室(2011)、株式会社G.M.A(2015)、TWINKLES (2016)、TAKUMIアスリートアカデミー(2016)を設立し、多岐にわたる活動に勤しむ。

【職業】
リーガエスパニョーラDeportivo Alaves 経営スタッフ
TWINKLES Director(CEO)
株式会社G.M.A 取締役
TERAKO屋学習教室 代表
TAKUMIアスリートアカデミー代表

【競技歴】
柏レイソルU12.U15
流通経済大学付属柏高等学校サッカー部
慶應義塾大学
Brisbane Force(オーストラリア2部)
Onehunga Sports(ニュージーランド1部)
スペインリーグMasnou C.D

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