守備組織の構築について一から考えてみる 良い守備は良い攻撃を生み出す 後編

守備組織の構築を整理するうえでまず考えるべきことは、「良い守備とはなにか」という点だ。 

相手の攻撃を防ぐ=良い守備なのか。

失点をしなければそれですべてオッケーなのか。

最後のところで個人の力で防げていれば機能しているといえるのだろうか。 

特に育成年代においてはその段階での習得レベルと、将来的に身につけるべき成熟レベルを常に照らし合わせながら考える必要がある。 

前回の記事で「守備が機能している」とは相手がボールをコントロールしている状況においても、自分たちがゲームをコントロールできている状態とまず解釈できる。

相手が糸口を見つけられない、どうやって攻めたらいいかわからない状態を作れていることが理想になる。 

相手に背中を取らせない

そのために大切なのが「相手に背中を取らせない」ということになる。

人間の構造上、そしてサッカーと言うスポーツの特質上、意識が自分の全方向に向けられるのが当然だ。

誰でもボールが動くとそちらに目がいってしまう。

攻める時も、守る時もまず気持ちはゴールへのベクトルを取ってしまう。

だがそうした無意識化の判断でだけプレーしていると、気が付くとぽっかり空いたスペースを相手につかれてピンチに追い込まれてしまうことが多々ある。

だからこそ意識的に思考して状況にあったポジショニングと体の向き、守備へのアプローチをとることができるかが重要となるわけだ。 

サッカーを始めたばかりのころからすぐにできるわけではないし、すぐにわかるようになるわけではない。

でも「どこでどんなことが起きているのかを一番わかるのって目で見える景色からだよね。守る時にボールを相手の後ろから追いかけるのと、目の前から来る相手を守るのとどっちがいいと思う?」と尋ねれば、みんな後者を選ぶと思うのだ。

ゴールを守るために相手を自分の後ろに逃がさない。

オフサイドルールが入ってくる学年になってからはそのルールも利用する。

これを複数で協力しながら行うことが守備組織の構築のおける最も基本的で最も本質的なところではないだろうか。 

修正力の重要性

とはいえ、可能な限りボールを自分の背中に運ばせないように守ろうとして、そのための準備をして試合に臨んだとしても、そう簡単にすべてが思い通りに進むわけがない。

攻撃側はそうした守備側の狙いを外そうとボールを動かし、仕掛けをしてゆさぶりをかけてくる。 

だからこそ大切なのが修正力になる。 

自分の後ろにあるスペースは誰かがしっかりとケアしているだろうか。背後で数的不利になっていないだろうか。ボールが入った時にサポートに行く準備はできているだろうか。 

計算通りにしかできない、しようとしない選手はうまくいかないときの言い訳をミスの中に探してしまう。 

「俺はちゃんとやっているのに、あいつがマークを外した」

「僕はちゃんとポジションを埋めていたけど、あいつが抜かれた」 

現象から見ればそうかもしれない。だが守備組織を構築するとはあらかじめ与えられたポジションにいて、あらかじめ定められた対応をするだけではないのだ。

「相手がこちらがすべきプレーを突破してきたらなすすべなし」ではさびしいではないか。

サッカーとは攻撃でも守備でも補い合うことができるスポーツだ。

だからこそ自分がそれぞれの状況で担うべき役割を認識したうえで、「相手が味方を突破してきたらカバーにいけるように」「相手が出しどころをなくして足を止めたら加勢してボールを奪い取れるように」というふうに次手の準備をしておくことが欠かせないのだ。 

受動的ではなく能動的な守備

そのためには収縮と拡散が大事なキーワードになる。

相手に自由にプレーさせたくないエリア、起点を作られると失点の可能性が高まるエリアにボールが入った時には周りの選手がギュッと収縮してくることで狭い空間内で数的有利の状況を作り出せないといけないし、相手がそこからパスの出口を見つけ出したら再び拡散して最適な距離感を取れるようになることが求められる。 

人任せにすることなくプレーの流れに関与し続けること。それは常に盲目的に走り回るということではない。 

「いつ、どこで、なぜ、何のために、どのようにプレーをするのか」 

サッカーのメカニズムを知り、戦術理解を深めていくことで一つの動きで相手に影響を及ぼすことができるようになる。

一つのポジショニングで流れを変えることができるようになる。

動かないことで状況を動かすこともできるようになる。守備とは受動的なつまらないものではない。

知れば知るほど奥が深く、能動的に主導的に積極的に流れを作り出せるようになるのだ。

守備のワクワクを伝えられる指導者と出会えることができたら、それは本当に幸せなことだし、そのような指導者がどんどんどんどん増えてきてほしいと切に願う。

 

※こちらも合わせてご覧ください
守備組織の構築について一から考えてみる 良い守備は良い攻撃を生み出す 前編
https://fcl-education.com/training/performance/defense-football/

GKのフレームワークと各状況における原則~GK練習のための状況整理~
https://fcl-education.com/training/gk-framework/

 

執筆者

中野吉之伴

地域の中でサッカーを通じて人が育まれる環境に感銘を受けて渡独。様々なアマチュアチームでU-12からU-19チームで監督を歴任。097月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-154部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。オフシーズンには「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に日本各地に足を運んで活動をしている。17年10月からはWEBマガジン「子供と育つ」(http://www.targma.jp/kichi-maga/)をスタート。

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