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2018.09.03

守備組織の構築について一から考えてみる 良い守備は良い攻撃を生み出す 前編

守備組織の構築とはなんだろうか。

「守備は攻撃よりも整理しやすく、結果に結びつきやすい。守備は徹底することができるが、攻撃は難しい」

確かによく聞く言葉だ。

育成レベルでもそうだし、ブンデスリーガレベルでも実際に監督やコーチの口から似たような発言を聞くことは多い。

では機能している守備とはどんなものだろうか。

「守備が機能している」とは相手がボールをコントロールしている状況においても、自分たちがゲームをコントロールできている状態とまず解釈できる。

コントロールするためには相手が次にしてくる選択肢を予測し、可能な限りその選択肢をこちらの意図通りの方向へ誘導できることが求められる。

相手の攻撃を予測し続けていくために大切なのは、ゴールの位置、ボールの位置、相手の位置、味方の位置を把握し続けること。

正規のサッカーであれば11対11で行われる。

それだけの人数が、決して狭くはないグラウンドにおいてそれぞれがばらばらなプレーを行っていたら、それぞれの状況を逐一正確に把握することはほぼ不可能だろう。

次に相手がどんなプレーをするかをイメージすることはできない。だからこそ、誰がどのように守るべきかのプレー基準が整理されていることが重要になるわけだ。

まず守備は「マンマークディフェンス」と「ボールオリエンテッドディフェンス」という守り方に分けられる。

マンマークはその名の通り、自分が意識を向ける対象を特定の個人に設定すること。

具体的に言えば「8番マークするよ」「10番マークよろしくね」と誰を誰が守るべきかを明確なものにする。

守るべき対象が決まっているのでやるべきことが非常にシンプルな反面、相手の力が上回り一か所でも突破を許してしまうとそこからなし崩しになってしまうデメリットを持つ。

オールコートで相手選手の現在地にそのままついているだけでは、相手チームにそれ以外のスペース全てを使われることを意味する。

一方の「ボールオリエンテッドディフェンス」だが、ドイツでは「ボールの動きに応じたディフェンス」と呼ばれている。

ボールの位置と動きに対してそれぞれ守備の対象と優先順位を変えていくというもの。

例えばボールがセンターにあればすぐ近くにいる選手が前に出て距離を詰め、両脇の選手は中に絞ってスペースを消す。

サイドに展開されると、同サイドの選手が外に出て他の選手は順次そちらのサイドへ位置をスライドさせていく。

ボールを持った相手とファーストディフェンスとして寄せる味方選手、そこからのパス、ドリブルに対応できるようにその位置から斜め後ろにポジションをとることで、相手の前進を止める。

こちらから能動的に仕掛けることで相手の攻撃を誘導して狙い通りにボールを奪う守備も可能だ。

ただボールを中心に守備位置をスライドさせて守るため、誰もケアしていないスペースが生じることを念頭に置いておかなえればならない。

チーム内でそうした共通したイメージが持てていないと、一気にその守備が薄いところにボールを運ばれてピンチを招いてしまうこともある。

またボールにばかり気がいって相手選手を離して見てしまうことが多くなると、一瞬の動き出して一気に危険なエリアへの飛び出しを許してしまうことがある。

「マンマーク」か、「ボールオリエンテッド」か。

守り方の違いを把握するだけでは、バランスを取ることはできない。

「マンマーク」で相手をケアするべき局面と「ボールオリエンテッド」で守るべき局面を知ることが大切だ。

バランスを取るうえでも基本的にはボールオリエンテッドで守りながら、チーム全体でスライドして守備組織を構築していくことが推奨される。

だがボールサイドではより積極的な守備アプローチが必要になる。スペースばかり守っていては相手に好きなようにプレーをされてしまうからだ。

効果的な守備とは、相手にプレッシャーがかかった状態にすることだ。ボールを取られるかもしれないというプレッシャーがあるから、相手は判断を焦り、ミスパスをしたり、コントロールミスをしたりする。

ただ相手の前に立ちふさがっているだけではプレッシャーにはならない。

そこから前には運べないかもしれない。

でも取りに来なければそこでボールを失うことはないし、じっくりと次のパスコースを探す時間を持つこともできる。

ボールを持った相手にそうした時間を与えているのはいい状態とは言えないわけだ。

ボールオリエンテッドで自分の守備位置をスライドしながら、ボールが自分サイドに来た時にすぐ相手への距離を詰めてプレッシャーをかけることができるように準備しておくことが欠かせない。

ただ、だからといってどう猛に突っ込んで交わされたら元も子もない。

インターセプトが狙える状況なのか、無理なら距離を詰めてまず前には運ばせない。

さらに体を寄せながら相手のプレー選択肢を狭めていくというふうに優先順位をしっかりと整理しておくことが重要だ。

さらに自陣ペナルティエリア付近では一瞬のずれから相手にチャンスを許してしまうだけに、エリアよりもよりマンツーマンで守ることが重要だ。

数的有利な状況を作り、1-2がエリアをケア、ほかの選手がマンマークという状況が望ましい。また相手のキープレーヤーにはより距離を詰めて守る必要があるので、ここでもマンツーマンが有効だろう。

※こちらも合わせてご覧ください

ゴールという目的地に辿り着くために 攻撃プランの構築に向けて 前編
https://fcl-education.com/raising/independence-coaching/game-plan-construction/

ゴールという目的地に辿り着くために 攻撃プランの構築に向けて 後編
https://fcl-education.com/raising/independence-coaching/goal-plan-2/

 

執筆者

中野吉之伴

地域の中でサッカーを通じて人が育まれる環境に感銘を受けて渡独。様々なアマチュアチームでU-12からU-19チームで監督を歴任。097月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-154部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。オフシーズンには「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に日本各地に足を運んで活動をしている。17年10月からはWEBマガジン「子供と育つ」(http://www.targma.jp/kichi-maga/)をスタート。

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