2018.07.10
ゴールという目的地に辿り着くために 攻撃プランの構築に向けて 前編
サッカーは自由度の高いスポーツだ。
試合では様々なシーンがあり、選手には状況に応じた判断力が求められる。
だが自由度が高い=何をしてもいいというわけではない。
それぞれが自分のやりたいようにやっていては仲間とのつながりは生まれないし、一か八か任せのサッカーになってしまう。
チームの中で共通イメージを持てるからこそ、攻守におけるコンビネーションプレーも可能となる。
そのためには基準となるメカニズムを知り、基本となる戦術を身につけることが必要だ。
つまり自由度が高いというのは、数多くある選択肢の中から現状にふさわしい決断する自由のこと。
こうした解釈のないサッカーのゲームというのは、行き当たりばったりのドライブと似ているかもしれない。
ノープランで車に乗り込み、気分次第で道を選ぶ。
問題なく行けることもあれば、渋滞につかまってしまうこともある。
それ自体を楽しむのであれば、それはそれでいいだろう。
でもゴールという目的地へ時間内にたどり着くことを目標にするのであれば、事前の準備が必要になる。
出発前にナビにルートを入力することで、どこが空いていてスムーズに行けるかが見えてくる。
サッカーも同じではないだろうか。
ただボールを蹴りあっている、思い思いにやりたいプレーをするだけでいいなら、どれだけごちゃっとしたサッカーになってもみんな満足できる。
でも、「相手より1点多くとったチームが勝つ」というゲームと向き合うためには、事前の準備が大切になってくる。
地図を開き、目的地への距離とどんなルートがあるかを確認する。
すなわち、ゴールへの道を見出す作業だ。
もちろんサッカーでは相手がいるので、その道は絶えずできたり消えたりする。
だからどうすれば道が生まれ、どうすれば消えてしまうのかを知ることが大切なのだ。
突き詰めれば、あえて狭いスペースからでも攻略することができるようになる。
渋滞したところを無理に通り抜けることはできないが、その中で裏道の情報を持っていれば、見た目以上にスムーズに突破することができたりするように。
サッカーではゴールが真ん中にあり、相手チームはまずそこから守ろうとする。
相手が必死に守ろうと集まっているところにただ突っ込んでいこうとしても、そこから前にはなかなか進めない。
そこでスペースがあり、前へのルートが開けやすいサイドに展開することで攻撃の起点を作ろうとするわけだ。
でもサイドからどれだけ攻撃を仕掛けても最終的にゴールは真ん中にある。
サイドから行こうが、真ん中から行こうが、最終的にはゴール前にボールを運べなければならない。
サイドからであればクロスをどのように送るのかが求められるし、真ん中からであれば、いつ、どういった状況だったら、相手守備の裏を取って攻略できるかを知っておくことが大切だろう。
そうした情報が全くない状態で試合に臨んだら、なかなか「ゴールという目的地」にはたどり着けない。
ナビにルートを入力する作業は、あらかじめ準備しておいた攻撃の構築プランを順応させるということになる。
攻撃を構築するという意味でビルドアップという言葉が使われるが、僕はこれを「ボールを回しながら味方が最適なポジショニングを取る時間を作り、狙い通りの攻撃を行うための準備をする段階」と解釈している。
相手の陣形・対応から、どこにスムーズにゴール近くまでボールを運べるルートがあるのかを見定め、手持ちの攻撃パターンからどんな仕掛けをするのかを判断していく。
自分たちの攻撃に対して相手がどのように対処するかという予測から逆算したイメージが持てるようになると、より優位な攻撃を仕掛けることができる。
また仕様OSが優秀だと瞬時にルートが検索できるように、それぞれの戦術理解を深め、試合経験を重ねていくことで、こうした判断スピードを速め、決断精度を高めていける。ナビのOSは常にバージョンアップさせないと大事な時に役に立たないのと同じで、戦術理解に関しても常に進歩し続けている新しい解釈やアイディアを取り入れていくことが欠かせない。
アンテナは常に張っておきたい。
まとめると、
1.十分なゴールへのルート情報を持っているか
2.それぞれのルートを有効活用するための手段を持っているか
3.判断スピードアップ、決断精度アップに取り組んでいるか
4.情報のバージョンアップはできているか
以上4点が攻撃への取り組みで気をつけなければならないポイントだ。次回はもう少し具体的な攻撃プランについて考えてみたいと思う。
※こちらも合わせてご覧ください
ドイツにおけるサッカージュニア年代の位置づけと取組み
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/junior-germany-football/
サッカー漬けの選手達 関わる大人が考えるべきこと
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/soccer-football-coach-parent/
執筆者
中野吉之伴
地域の中でサッカーを通じて人が育まれる環境に感銘を受けて渡独。様々なアマチュアチームでU-12からU-19チームで監督を歴任。09年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。オフシーズンには「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に日本各地に足を運んで活動をしている。17年10月からはWEBマガジン「子供と育つ」(http://www.targma.jp/kichi-maga/)をスタート。