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2017.09.07

人の運動は「感動」感じて動いて、動いて感じる なぜトレーニングは必要なのかpart3

第一回、二回と運動とスポーツの違いとは何かを柱に話を進めてきましたが、体を動かすということは大人が子供に教えることではない、というのがその本質にあるかと思います。

しかし残念ながら、人間という動物は大脳新皮質が脳幹脊髄系や大脳辺縁系よりも優位になってくると、体を動かすという、いわゆる低次レベルと言われる脳がする仕事に対して様々なブレーキをかけ始めるのです。しかもこれはよく言われる ハングリーさが欠けてくるような生活環境の中にいるとその現象はさらに顕著に表れてくるとも言えます。

体を動かすのは理屈ではありません。

理屈で身体を動かしていると思っているのは脳の中のごく一部でしかありません。

トレーニングをさせるからトレーニングは「苦痛」になります。

勉強を強制的にさせるから勉強が嫌いになります。

しかし、勉強が出来る子供はほっておいても勉強を自発的にするものです。

これはサッカーが好きな子供はずっとサッカーをやっているのと同じと言えます。

基礎が出来ていない選手ほど高度な技術や戦術を知りたがる

サッカーを「楽する」とは言いません。

サッカーを「楽しむ」といいます。

楽をするとは手を抜くということですが、楽しむという事は本気で手を抜かないという事です。

大人は頭脳で作り出した様々なメソッドを用いて子供の脳に指導をしますが、勘違いしてはいけないのは、人間における大人の脳とは「大脳新皮質」のことであり、子供の脳とは「大脳辺縁系、脳幹脊髄系」であるということ、そして運動をする、つまりは動物としての脳で言うならば、大脳新皮質とは子供の脳であり、大脳辺縁系、脳幹脊髄系は大人の脳だということを。

走っている時、大脳新皮質から「はい、次は腸腰筋使って、長母指伸筋使って」などと指令されれば、走る事はおろか、歩く事すらままならなくなります。

子供の遊びは大人が指示を出して楽しむものではありません。

自分たちの肉体と頭脳を使って全身で遊ぶ事。

本来トレーニングとスポーツはバラバラにして行うものではありません。

日本で生まれ育った子供は文法を学んでからの日本語を聴き話せるようになるわけではありません。

体力が気力を生み出しその気力が知力を生み出す。

この動物の基本を差し置いて、いきなり知力を頭脳に詰め込むから動けない子供、動けない選手が出来上がると言っても過言ではありません。

良く動き回る子共は賢くなります。

脳は感動という基本システムを持って成長します。

つまりは感じて動き、動いて感じる。

そこにあとから思考という微調整をするシステムが関わる事でスポーツという「運動にルールが組み合わさったもの」が出来るようになるのです。

トレーニングは遊びから。

つまりは子供に考えさせることこそが今の日本のジュニア年代に一番欠けている要素だと私は思います。

決断力やとっさの判断力は頭脳だけ使っていたのでは決して身に付きません。

大人の理屈目線で子供を指導していると子供の運動能力(脳力)は見抜けません。

どうしても知性に偏りがちな大人の頭脳では知性を生み出す大本である感性は見抜けません。

「そんなプレーがなんで出来るんだ」というようなファンタジスタな動きこそ、残念ながら理屈に偏る大人の脳ではなく子供の脳 つまりは大脳辺縁系、脳幹脊髄系が生み出すものなのです。

まずは自由にやらせてみる勇気と体力を指導者がもてるか?

もちろん全てを子供に任せたらカオスになります。

しかし最近の脳幹脊髄系や大脳辺縁系が弱ってしまった子供たちには逆に好きなようするということが苦手になっています。

ならばこそ、指導する大人が童心に帰り純粋にサッカーを楽しむためにどうしたらいいかを、肉体を使って子供たちと一緒に走り回るということが必要なのではないかと思われます。

口先ばかりで身体を動かさない指導者では子供の指導は出来ません。

小手先と口先ばかりの理論と技術では本当の意味でのスポーツは楽しめません。

次回のシリーズはさらに運動とスポーツについて深めていきたいと思います。

※こちらも合わせて読んで頂けると理解が深まります。

理屈で身体は動かない なぜトレーニングは必要なのかpart1
https://fcl-education.com/training/performance/body-logical-move-not-football/

「楽しむ」ことと「楽する」ことの違い なぜトレーニングは必要なのかpart2
https://fcl-education.com/training/performance/training-enjoy/

執筆者紹介
内田真弘 

1970年3月10日生まれ

神奈川衛生学園専門学校 東洋医療総合学科  教員
横浜国際プールはりきゅうマッサージ室    室長
筑波大学 理療科教員養成施設       非常勤講師
東京衛生学園専門学校 東洋医療総合学科    非常勤講師
東京衛生学園専門学校 臨床教育専攻科     非常勤講師
ヒューマンアカデミー横浜校 トレーナー科     非常勤講師

ドイツ VPTアカデミー 認定 スポーツフィジオセラピスト
ドイツ VPTアカデミー 認定 PNF 

神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業後、ドイツ、フェルバッハにあるVPTアカデミーフィジオクラスに招聘され、スポーツフィジオ、マニュアルセラピー、PNFなどのアシスタントを務め、帰国後は各種専門学校での講義、治療院での患者さん、アスリートの治療、指導にあたる。日本サッカー協会主催の第56回サッカードクターセミナーでは「スポーツ競技に対するゼロ式姿勢調律法の有効性」を講義。神奈川体育センター主催のアスリートサポート講座での姿勢と呼吸についてのセミナーや、神奈川県体育協会主催での「PNF]セミナーなど各地で講演なども行う。指導しているアスリートもプロ野球、スピードスケート(オリンピック日本代表選手)、フィンスイミング日本代表、プロボクサー、サッカー、レスリング、テニス、ダンスと幅広く行う。

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