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2018.05.03

日本とスペインの違い 目的を明確にし意図を持ってプレーする習慣化の重要性

日本代表ハリルホジッチ前監督の電撃解任のニュースが世間を賑わせているる。しかし、スペインリーグでは監督解任は日常茶飯事で、成績不振、クラブとの考え方の相違、給料未払い問題など、多くの理由により、監督が入れ替わる。

特徴的なのが、スタッフ陣全員が総入れ替えとなることである。

監督、第二監督、フィジカルコーチ、テクニカルコーチ、キーパーコーチなど、その 監督の御一行が明日から違う御一行となり、練習前に顔を合わす。今日解任され、明日次の監督 が来るということは、それだけ指導者の数も多く、競争の激しい世界であることが伺える。

また、 それにより、選手の起用にも大きく影響がある。

新しい監督が自身の考えるサッカーをするために、そのスタイルに合った選手を連れてきたり、今まで使われていなかった選手を起用したりす る。

逆に前監督に気に入られ、中心選手であった選手ですら、メンバーから外され、戦力外の通告を受け、他のクラブに移籍せざるを得なくなったりする。 

これは、プロチームだけの話ではない。育成年代の小中学生、高校生のチームでも、よくある話だ。

カテゴリーやレベルに関係なく、思ったような成果を得られない場合、監督も選手も、そ の上にいるクラブの会長やスタッフまでもチームを去らなければならない。

そのプレッシャーの中、毎日が勝負であり、結果として見える形でのパフォーマンスを出さなければならない厳しい 世界なのである。

ただし、スペイン人の国民性として、今ある現状を打破し、成長するためには、影の努力をす るという感覚はない。一人で黙々と努力することがサッカーの試合での結果に繋がるとは思って いない。

だからチームを替え、教わる監督を代える。監督が選手を選ぶように、選手にもまた監督を選ぶ権利がある。

その点日本人はいつか監督に認めてもらおうと頑張ることのできる民族なので、量をこなすことで上手くなるような単純なボールコントロールが上手いのである。

育成年 代の日本代表や日本の代表として世界大会に参加したクラブが良い結果を出すのは、年齢が低い ほど、その競技の経験が浅いほど、絶対的な量をこなすことで、技術が向上する傾向が強いため である。

逆に、A代表やU-23代表になり、世界大会でパタッと勝てなくなるのは、勝敗を決める要因として、試合展開の中での戦術的判断の要素が高くなり、個人、グループ、チームの総合力が重要になってくるからだ。

この総合力を高めるには、一人でコーンに向かって自主練習をするより、 試合を想定したチーム練習の質がモノを言うのである。

スペイン人はそれを理解した上で、無駄な個人練習はせず、チーム練習で100%の力を発揮できるように、その他の時間は身体を休めたり、 家族との時間を増やし、リフレッシュに当てる。 

要するに、スペイン人の思考として、チームが勝つために、自分が結果を出せるように意味のあること以外はせず、その効率の良さが、選手の後々の成長に繋がっている。

例えば、以下にランダムに数字が並んでいる。これを5秒間見るとしよう。

   7256148    1346890    5729641    8735180

 3はいくつあったであろうか。

正解は2つである。

 次は、もう一度先ほどの数字を見てもらうが、2秒間で7がいくつあるかを探してほしい。

そうすると、いとも簡単に3つあることがわかる。 

これはあくまでも例えであるが、何の目的もなく行動するのと、目的を明確にして行動するのでは、得られる成果が全く違うものとなる。 

スペインでは、毎回の練習で、何を意図として練習をして、選手に何を求めるのかが、日本に比 べて極めて明確である。

小さい頃から11日このような練習を積むと、いつか大きな差が生まれ るのである。 

こうしたスペインの育成システムや選手を育成する立場の指導者、さらには両親の心構えや考え方こそ、スペインサッカーのレベルの高さの根底にあると考える。

 ”目的を持った”という点では、サッカーのプレーモデルについても同じことが言える。

特に日本に比べて意識が高いのは、ピッチを細かくゾーンに区切り、それぞれのゾーンをどう通過して、ゴー ルまでボールを運ぶかと言う点である。

コートを自陣と敵陣に分け、さらにそれぞれを半分に横に区切り、自陣ゴールから、ゾーン1、ゾーン2A、ゾーン2B、ゾーン3とする。(*日本では、 DF3rdMF3rdOF3rdと分けるのが主)さらにそこから、縦に3分割することで、トータル1 2ゾーンのどこにボールがあり、どこのゾーンを通過して攻めるか、またはどこのゾーンを通過させないように守るか、という分析をすることを基本中の基本作業とする。

育成年代でも同様に分析される。

監督も選手もいかにして前進し、時には後退し、それは左右真ん中どこの場所での事象なのか、常々考えてプレーしている。

チームは今何を目的としたプレーをしているのか理解してプレーしているのだ。

その中で生まれる状況認知能力、判断能力は、ハイレベルなものであり、 先日、FCバルセロナの退団を発表したイニエスタの視野の広さやプレーの正確さは、子どもの頃 からのそのような習慣が生んだ賜物であると説明できる。

※こちらも合わせてご覧ください

選手が語るスペインのサッカー 現場から知識を紡ぐことの重要性
https://fcl-education.com/raising/sportsmanship/spain-football-real/

執筆者
今村匠実

慶應義塾大学政策・メディア研究科にて、スポーツ心理学、社会学を専攻し、修士号を取得。
柏レイソルユース・流経大柏、慶應大学など、名門チームでプレーし、全国優勝を経験。
文武両道をモットーに、スポーツのみらず、学校の勉強や課外活動にも力を注いできた。小学校二年生時に作文「オーイ、じいちゃん」で厚生大臣賞を受賞(日本一)したことをきっかけに毎年作文での全国区での受賞を続けた。

現在は、海外のプロリーグでプレーしながら、TERAKO屋学習教室(2011)、株式会社G.M.A(2015)、TWINKLES (2016)、TAKUMIアスリートアカデミー(2016)を設立し、多岐にわたる活動に勤しむ。

【職業】
スペインリーグでプレー
TWINKLES Director(CEO)
株式会社G.M.A 取締役
TERAKO屋学習教室 代表
TAKUMIアスリートアカデミー代表

【競技歴】
柏レイソルU12.U15
流通経済大学付属柏高等学校サッカー部
慶應義塾大学
Brisbane Force(オーストラリア2部)
Onehunga Sports(ニュージーランド1部)

 

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